「Kif」
著者 : Laurent Chalumeau
著者 : Laurent Chalumeau
出版社 : Grasset
本の種類 : ソフトカバー(20.5x3x13.5)
ページ数 : 459頁
国際的に著名な俳優より前に生まれたものの、不幸な事に両親が『Georges』という名前を選んだため、自己紹介するたびに気まずい思いをしている Georges Clounet という名の元機動隊員がこの小説の主人公。
大使警護の職を定年退職し、キャンプ場を購入して悠々自適な引退生活を送ろうと、 Georges はフランスへ帰ってきた。 ところが、Georges が預金管理を任せていた、モナコの投資会社に務める義理の兄の Régis は、 Georges 許可無く彼の預金を投資しており、Georges は預金がほとんど残っていないという事実を知らさせる。
義弟が彼の預金の大半を投資した、サウジアラビアの富豪が計画したドバイのスキー場建設計画は、中止になってしまったため、資金回収はほぼ不可能だと、Régis は言う。 そこで、Georges は、もう一件の投資先であるニース郊外にあるクラブの経営者と逢うため、 Régis と共にクラブへ足を運ぶ。 ところが、 Georges の目の前で、クラブに男達が押し入り、自動小銃を発砲するという事件が起る。
成り行きから、クラブを経営する事になってしまったが、ナイトビジネスの事など全く知らない一本気の Georges は、甘い汁を吸おうと、寄って来たちんぴらや警官を鼻であしらい、自分の流儀でクラブを経営しようとする。
そんな Georges に一矢報いようと躍起になるチンピラ、ヒモや悪徳警官に、
風紀と治安を乱すという名目で、 Georges のクラブの閉鎖を要求する極右政党国民戦線所属の市議、
イスラム原理主義に改宗した元営業マンのフランス人、
ジハード参加経験があるという噂のあるアラブ系フランス人のガードマン、
サウジアラビアの富豪、
等などが、それぞれの利を求め、錯綜する様が、デンポ良く描かれてゆく。
現在の南仏の社会的縮図を形どった、いびつな形をしたピーツを一つ一つ、丹念にこしらえ、それをストーリーの中に巧妙に嵌め込ながら、著者は、壮大な立体パズルを組み上げていく。
そして、最後まで読み終わってから初めて、こんな危ういバランスを保ちながらも、きちんと地に足が着いた建築物を建てるには、細密な設計図が、必要だったのでは?と、初めて気がつく、そんな仕組みになっている。
中盤までのテンポの良さと比較すると、終盤は、筆致のリズムがスローモードになるものの、ラストでは、強大なジグソーパズルを完成させた時のような、全てのピースがぴっちりと、噛み合う、心地よさを感じ取ることが出来た。
厳密には、ハードボイルドとも、サスペンスとも、コメディーとも呼ぶ事は出来ないが、サスペンス、アクション、コミカル、そしてハードボイルド的な要素を備えている、快適な時間を送ることの出来たエンタメ小説。
時々俗語が顔を出すので、フランス語難易度は、難しめに設定したが、くだけた口語調の読み易い文体で書かれているので、俗語が気にならない方の多読用にも、お勧め出来るのではないかと思った。
【こんな人にお勧め】
【きわめて個人的な本の評価】
【関連記事】
本の種類 : ソフトカバー(20.5x3x13.5)
ページ数 : 459頁
国際的に著名な俳優より前に生まれたものの、不幸な事に両親が『Georges』という名前を選んだため、自己紹介するたびに気まずい思いをしている Georges Clounet という名の元機動隊員がこの小説の主人公。
大使警護の職を定年退職し、キャンプ場を購入して悠々自適な引退生活を送ろうと、 Georges はフランスへ帰ってきた。 ところが、Georges が預金管理を任せていた、モナコの投資会社に務める義理の兄の Régis は、 Georges 許可無く彼の預金を投資しており、Georges は預金がほとんど残っていないという事実を知らさせる。
義弟が彼の預金の大半を投資した、サウジアラビアの富豪が計画したドバイのスキー場建設計画は、中止になってしまったため、資金回収はほぼ不可能だと、Régis は言う。 そこで、Georges は、もう一件の投資先であるニース郊外にあるクラブの経営者と逢うため、 Régis と共にクラブへ足を運ぶ。 ところが、 Georges の目の前で、クラブに男達が押し入り、自動小銃を発砲するという事件が起る。
成り行きから、クラブを経営する事になってしまったが、ナイトビジネスの事など全く知らない一本気の Georges は、甘い汁を吸おうと、寄って来たちんぴらや警官を鼻であしらい、自分の流儀でクラブを経営しようとする。
そんな Georges に一矢報いようと躍起になるチンピラ、ヒモや悪徳警官に、
風紀と治安を乱すという名目で、 Georges のクラブの閉鎖を要求する極右政党国民戦線所属の市議、
イスラム原理主義に改宗した元営業マンのフランス人、
ジハード参加経験があるという噂のあるアラブ系フランス人のガードマン、
サウジアラビアの富豪、
等などが、それぞれの利を求め、錯綜する様が、デンポ良く描かれてゆく。
現在の南仏の社会的縮図を形どった、いびつな形をしたピーツを一つ一つ、丹念にこしらえ、それをストーリーの中に巧妙に嵌め込ながら、著者は、壮大な立体パズルを組み上げていく。
そして、最後まで読み終わってから初めて、こんな危ういバランスを保ちながらも、きちんと地に足が着いた建築物を建てるには、細密な設計図が、必要だったのでは?と、初めて気がつく、そんな仕組みになっている。
中盤までのテンポの良さと比較すると、終盤は、筆致のリズムがスローモードになるものの、ラストでは、強大なジグソーパズルを完成させた時のような、全てのピースがぴっちりと、噛み合う、心地よさを感じ取ることが出来た。
厳密には、ハードボイルドとも、サスペンスとも、コメディーとも呼ぶ事は出来ないが、サスペンス、アクション、コミカル、そしてハードボイルド的な要素を備えている、快適な時間を送ることの出来たエンタメ小説。
時々俗語が顔を出すので、フランス語難易度は、難しめに設定したが、くだけた口語調の読み易い文体で書かれているので、俗語が気にならない方の多読用にも、お勧め出来るのではないかと思った。
【こんな人にお勧め】
南仏のクラブを軸に繰り広げられるエンタメ小説を読みたい方。 よく出来た構成のエンタメ小説を読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 4/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 4/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
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