♥ Coup de coeur ♥
「La fine equipe」
著者 : Guy Lagorce
「La fine equipe」
著者 : Guy Lagorce
出版社: JC Lattès
本の種類: ソフトカバー(14x2x22)
ページ数: 251頁
13歳になる Antoine は、掃除婦をしながら女手一人で子供を育てた、真面目一方の母と、美容師の姉と3人で、パリの郊外にある団地で暮らしている。
家族に内緒で、仲間とつるんで、倉庫荒らしをして、小遣い稼ぎをしており、盗みの上がりの金を貯金しており、かなりの蓄えがある Antoine は、毎日苦しい家計をやりくりしている母親を助けてやりたいと思いつつも、母親に真実を打ち明ける事が出来ないので、苦い思いをしている。
ある日、スポーツ用品店の倉庫に忍び入った Antoine は、憧れの名門陸上クラブ Racing Club の シャツを見つける。
走る事が大好きで、自分なりに練習を続けていた Antoine は、自分の実力を試してみたくて、Racing Club のシャツを身に着け、こっそりと、Racing Club が練習する Croix Catelan へ赴き、クラブの選手に混じり、雨の中、クロスカントリー競走に参加する。
トップを走っていた選手と、せせり合い、ついに彼を引き離す事に成功した Antoine だったが、ゴールに差し掛かる前の森の中、待ち伏せしていた三人の男達に捕まってしまう。 抵抗し、一人の男を傷つけたものの、Antoine は、他の二人に取り押さえられ、無理やり車に乗せられてしまう。 男達は、 Racing Club のメンバーの一人の Beauchamps 製薬会社の社長の息子を誘拐するつもりだったのだが、間違って Antoine を拉致してしまったのだった。
抵抗した Antoine により、傷を受けた仲間を治療するため、男達は、あらかじめ用意してあった隠れ家のそばに住んでいる看護婦の家へ向かう。
そして、 Antoine と、看護婦の Camille は、Vack という、平気で人殺しをする男の囚われの身となってしまう。
かなり以前に紹介したことのある「Quelqu'un de bien」の著者 Guy Lagorce 氏の手による、軽快な口調で語られたスリラー。
主人公の13歳の男の子が語り手で、作品の大部分は、フランスのティーンエージャーが普段使う、くだけたフランス語で書かれています。
このユーモアたっぷりの語り口は、決して格調のあるフランス語ではありませんが、ティーンエージャーの気持ちがストレートに伝わってくるので、自然と主人公に感情導入してしまいました。
あまりに偶然が重なりすぎで、多少、荒唐無稽なところが見受けられますが、それを充分に凌ぐ魅力に溢れている、そんな小説。 この小説には、リアリティーがないなぁと思いつつも、しっかりと虜になってしまう、日本の漫画とどこか通じるところがあるような気がしました。
それでも、作品中の、スポーツ選手の心理描写には、作り物ではない、臨場感がたっぷり、自分が陸上選手になったようなドキドキ感を味わう事が出来ました。
その外にも、うれしくなってしまう、魅力にあふれている人物が活躍する、ちょっと現実離れした、素敵なストーリーのエンタメ小説です。
なんとか賞を受賞した、手堅く書かれてはいるものの、面白味のない作品などより、私は、欠点は多いけれど、心がうきうき明るくなるパワーを与えてくれるこの手の作品の方がずっと好き。
文学的価値のある作品ではありませんが、読み終わった後、憂さが晴れ、ほんわか気分になれました。
最後の章を読みながら、いくら小説だとはいえ、ちょっと現実味が薄いのでは、などと思いつつも、高まる主人公の気持ちがじんじんと伝わってきて、思わず涙がほろり。
そう、多少リアリティーに欠けていたとしても、高揚感やカタルシスを十二分に堪能出来るこの手の作品は、うんざりする事ばかりの毎日に立ち向かってゆくための、元気の素になるような気がします。
どういうわけか、暗い小説が多い、フランス現代小説の中、この手の明るい作品は、ホント貴重な存在。
この本、1997年に初版されたのですが、10年以上前に書かれたとは思えないほど、今的な作品でもあるので、現在の所、絶版になっているようですが、是非再版してもらいたい本です。
手軽に読める、エンターテイメントスリラーなので、日本人にもかなりウケルタイプの本ではないかと思いました。
【こんな人にお勧め】
【きわめて個人的な本の評価】
【関連記事】
2010年8月26日に一部加筆修正。 2013年3月25日にレイアウト修正。
本の種類: ソフトカバー(14x2x22)
ページ数: 251頁
13歳になる Antoine は、掃除婦をしながら女手一人で子供を育てた、真面目一方の母と、美容師の姉と3人で、パリの郊外にある団地で暮らしている。
家族に内緒で、仲間とつるんで、倉庫荒らしをして、小遣い稼ぎをしており、盗みの上がりの金を貯金しており、かなりの蓄えがある Antoine は、毎日苦しい家計をやりくりしている母親を助けてやりたいと思いつつも、母親に真実を打ち明ける事が出来ないので、苦い思いをしている。
ある日、スポーツ用品店の倉庫に忍び入った Antoine は、憧れの名門陸上クラブ Racing Club の シャツを見つける。
走る事が大好きで、自分なりに練習を続けていた Antoine は、自分の実力を試してみたくて、Racing Club のシャツを身に着け、こっそりと、Racing Club が練習する Croix Catelan へ赴き、クラブの選手に混じり、雨の中、クロスカントリー競走に参加する。
トップを走っていた選手と、せせり合い、ついに彼を引き離す事に成功した Antoine だったが、ゴールに差し掛かる前の森の中、待ち伏せしていた三人の男達に捕まってしまう。 抵抗し、一人の男を傷つけたものの、Antoine は、他の二人に取り押さえられ、無理やり車に乗せられてしまう。 男達は、 Racing Club のメンバーの一人の Beauchamps 製薬会社の社長の息子を誘拐するつもりだったのだが、間違って Antoine を拉致してしまったのだった。
抵抗した Antoine により、傷を受けた仲間を治療するため、男達は、あらかじめ用意してあった隠れ家のそばに住んでいる看護婦の家へ向かう。
そして、 Antoine と、看護婦の Camille は、Vack という、平気で人殺しをする男の囚われの身となってしまう。
かなり以前に紹介したことのある「Quelqu'un de bien」の著者 Guy Lagorce 氏の手による、軽快な口調で語られたスリラー。
主人公の13歳の男の子が語り手で、作品の大部分は、フランスのティーンエージャーが普段使う、くだけたフランス語で書かれています。
このユーモアたっぷりの語り口は、決して格調のあるフランス語ではありませんが、ティーンエージャーの気持ちがストレートに伝わってくるので、自然と主人公に感情導入してしまいました。
あまりに偶然が重なりすぎで、多少、荒唐無稽なところが見受けられますが、それを充分に凌ぐ魅力に溢れている、そんな小説。 この小説には、リアリティーがないなぁと思いつつも、しっかりと虜になってしまう、日本の漫画とどこか通じるところがあるような気がしました。
それでも、作品中の、スポーツ選手の心理描写には、作り物ではない、臨場感がたっぷり、自分が陸上選手になったようなドキドキ感を味わう事が出来ました。
その外にも、うれしくなってしまう、魅力にあふれている人物が活躍する、ちょっと現実離れした、素敵なストーリーのエンタメ小説です。
なんとか賞を受賞した、手堅く書かれてはいるものの、面白味のない作品などより、私は、欠点は多いけれど、心がうきうき明るくなるパワーを与えてくれるこの手の作品の方がずっと好き。
文学的価値のある作品ではありませんが、読み終わった後、憂さが晴れ、ほんわか気分になれました。
最後の章を読みながら、いくら小説だとはいえ、ちょっと現実味が薄いのでは、などと思いつつも、高まる主人公の気持ちがじんじんと伝わってきて、思わず涙がほろり。
そう、多少リアリティーに欠けていたとしても、高揚感やカタルシスを十二分に堪能出来るこの手の作品は、うんざりする事ばかりの毎日に立ち向かってゆくための、元気の素になるような気がします。
どういうわけか、暗い小説が多い、フランス現代小説の中、この手の明るい作品は、ホント貴重な存在。
この本、1997年に初版されたのですが、10年以上前に書かれたとは思えないほど、今的な作品でもあるので、現在の所、絶版になっているようですが、是非再版してもらいたい本です。
手軽に読める、エンターテイメントスリラーなので、日本人にもかなりウケルタイプの本ではないかと思いました。
【こんな人にお勧め】
スカッとするサスペンス小説を読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
【関連記事】
2010年8月26日に一部加筆修正。 2013年3月25日にレイアウト修正。
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