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世界中から集められた凶悪犯を収容する国連監視の刑務所が月にある近未来が舞台。
2056年に起こった受刑者による暴動以降、月刑務所の管理は、完全に国連の手を離れてしまった。 月の刑務所から地球へ戻ってきたものは誰もいないため、そこで何が起こっているのかは、なぞに包まれていた。 国連は、何人かの受刑者と接触し、わずかばかりの情報を得る事に成功していたが、それは、極秘扱いされていた。
巨大企業の社長である、富豪の LG こと、Laroche Galouseau は、ある決意を胸に秘め、月の刑務所に潜入するため、自ら母を殺害する。
高速裁判の後、月刑務所送りの刑を受けた LG は、他の受刑者と共に、月へ送られる事になる。 その輸送中に、LG は、自分の目的を達するために、あらかじめ目をつけていた5名の受刑者と接触し、地球への帰還と多額の報酬の代わりに、彼らの協力を請う。
「Sept」シリーズの最終巻「Sept prisonniers」は、近未来が舞台のSF漫画。
白人、黒人、黄色人種の敵対する3つのグループが存在し、国連から支給される食料及び物資の量が充分でないため、弱肉強食の無法地帯と化した月へ、ある目的を達するために、身の危険も顧みず自ら潜入を図った富豪 LG と、彼により選ばれた受刑者達の冒険が描かれています。
なかなか迫力あるグラフィック。 メカや、風景などの背景、アクションシーンなどに、優れたデッサン力が感じられます。
食糧不足を補うため、人間の死体を食用だけでなく、道具として、リサイクルする等という、かなりおぞましい、月面に住む受刑者達の様子が描かれているのですが、Patrick Tandiang 氏のグラフィックは、充分に迫力を感じさせながらも、程よい抑圧が効いており、不愉快な気持ちになる事はありませんでした。 よもすると、悪趣味な漫画になる可能性を孕んでいる、このストーリーをすっきりとまとめた品性の感じられる作画担当の Patrick Tandiang さんの筆さばきは、評価するに値すると思いました。
ストーリーに関しては、アイデアは、とても面白いのですが、SFを書く時の基本となる、ディテールがおろそかにされているので、リアリティー感が希薄になってしまったように感じられました。
本作には、BDの一冊48ページの基本を遥かにオーバーした全64ページが割かれているのですが、私は、64頁で書き込む事が不可能なタイプのストーリだと思いました。 このストーリーに信憑性を与えるには、かなりのディテールの設定および書き込みが必要となるため、せめて、この倍のページ数が必要。 一巻完結のシリーズ物の中に入れてしまうのは、もったいない、中篇漫画向きのシナリオだと思いました。
グラフィックは優れているし、ストーリーのアイデア自体は面白いので、細部を詰めて、ストーリーを練り直したら、もっと素晴らしい作品になったのでは・・・
と、読み終わった後、軽いフラストレーションを感じずにはいられませんでした。
* 「Le Sept」シリーズ7巻が一つになった「7 psychopathes ; 7 voleurs ; 7 pirates ; 7 missionnaires ; 7 guerrières ; 7 yakuzas ; 7 prisonniers : Coffret en 7 volumes」も出版されています。
【こんな人にお勧め】
面白いアイデアのSF漫画を読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】
2010年9月22日に一部加筆修正。
【関連記事】
「Le Sept」シリーズ
2056年に起こった受刑者による暴動以降、月刑務所の管理は、完全に国連の手を離れてしまった。 月の刑務所から地球へ戻ってきたものは誰もいないため、そこで何が起こっているのかは、なぞに包まれていた。 国連は、何人かの受刑者と接触し、わずかばかりの情報を得る事に成功していたが、それは、極秘扱いされていた。
巨大企業の社長である、富豪の LG こと、Laroche Galouseau は、ある決意を胸に秘め、月の刑務所に潜入するため、自ら母を殺害する。
高速裁判の後、月刑務所送りの刑を受けた LG は、他の受刑者と共に、月へ送られる事になる。 その輸送中に、LG は、自分の目的を達するために、あらかじめ目をつけていた5名の受刑者と接触し、地球への帰還と多額の報酬の代わりに、彼らの協力を請う。
「Sept」シリーズの最終巻「Sept prisonniers」は、近未来が舞台のSF漫画。
白人、黒人、黄色人種の敵対する3つのグループが存在し、国連から支給される食料及び物資の量が充分でないため、弱肉強食の無法地帯と化した月へ、ある目的を達するために、身の危険も顧みず自ら潜入を図った富豪 LG と、彼により選ばれた受刑者達の冒険が描かれています。
なかなか迫力あるグラフィック。 メカや、風景などの背景、アクションシーンなどに、優れたデッサン力が感じられます。
食糧不足を補うため、人間の死体を食用だけでなく、道具として、リサイクルする等という、かなりおぞましい、月面に住む受刑者達の様子が描かれているのですが、Patrick Tandiang 氏のグラフィックは、充分に迫力を感じさせながらも、程よい抑圧が効いており、不愉快な気持ちになる事はありませんでした。 よもすると、悪趣味な漫画になる可能性を孕んでいる、このストーリーをすっきりとまとめた品性の感じられる作画担当の Patrick Tandiang さんの筆さばきは、評価するに値すると思いました。
ストーリーに関しては、アイデアは、とても面白いのですが、SFを書く時の基本となる、ディテールがおろそかにされているので、リアリティー感が希薄になってしまったように感じられました。
本作には、BDの一冊48ページの基本を遥かにオーバーした全64ページが割かれているのですが、私は、64頁で書き込む事が不可能なタイプのストーリだと思いました。 このストーリーに信憑性を与えるには、かなりのディテールの設定および書き込みが必要となるため、せめて、この倍のページ数が必要。 一巻完結のシリーズ物の中に入れてしまうのは、もったいない、中篇漫画向きのシナリオだと思いました。
グラフィックは優れているし、ストーリーのアイデア自体は面白いので、細部を詰めて、ストーリーを練り直したら、もっと素晴らしい作品になったのでは・・・
と、読み終わった後、軽いフラストレーションを感じずにはいられませんでした。
* 「Le Sept」シリーズ7巻が一つになった「7 psychopathes ; 7 voleurs ; 7 pirates ; 7 missionnaires ; 7 guerrières ; 7 yakuzas ; 7 prisonniers : Coffret en 7 volumes」も出版されています。
【こんな人にお勧め】
面白いアイデアのSF漫画を読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】
総合評価 | : | 3.5/5 | |
ストーリー | : | 3.5/5 | |
グラフィック | : | 4/5 | |
フランス語難易度 | : | 3/5 | (易<難) |
読みごこち | : | 3.5/5 | (難<易) |
2010年9月22日に一部加筆修正。
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