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著者 : Sylvain Tesson
出版社 : Folio
本の種類 : ペーパーバック
ページ数 : 206頁
先にブログで紹介した「S'abandonner à vivre」がおもしろかったので、これは読まないわけにはいかない!と、意気込んで手に取った「S'abandonner à vivre」の著者 Sylvain Tesson 氏の『ゴンクール・短編小説賞』受賞作。
そんな本書でも、「S'abandonner à vivre」と同様、人智では抗うことの出来ない運命の手に弄ばれる人間の姿を描いた短編小説が収録されている。
しかし「S'abandonner à vivre」では、皮肉な運命に対する清々しさにも似た諦観が、それぞれの作品の根底に流れており、それが作品の魅力を成していたのに対し、本書に収録されている大半の作品は、痛烈な運命に対する人間の無力を、巧みなストーリーを用い浮き彫りにする事に専念している。
優れた構成の短編小説が数多く収録されている作品集なので、「S'abandonner à vivre」を読む前に本書を読んだのなら違った感想が得られたかもしれないが、ままならぬ成り行きにより、窮地に追い込まれながらも、そんな状況へ人間を追い込んだ意地悪な運命に対し、読者に称賛に似た感情を抱かせてしまう、という「S'abandonner à vivre」に認められた芸当が、又、味わえるのではないかと期待して、本書を開いた私は、ほんのちょっぴりだけどがっかりさせられた。
そんな中、「Le glen」は、「S'abandonner à vivre」に通じる所があるように思われた、茶目っ気の感じられた作品である。
中には、暗~い気分になる作品も含まれているので、あえて、お勧めマーク♥は付けなかったが、フランス人お得意のシニックなオチのある、とても良く出来た短編小説が収録されているので、シニックな作風が気にならない方なら、充実した読後感が得られるのではないかと思った。
又、本書も「S'abandonner à vivre」と同様、時折、日常会話では、余りお目にかかる事のない単語が登場するが、読み易いフランスで書かれているので、多読用にもお勧めしたい一冊である。
*収録作品
「L'asphalte」
「Les porcs」
「La statuette」
「Le bug」
「Le lac」
「La fille
「Le naufrage」
「La chance」
「Le glen」
「La particule」
「L'île」
「Le sapin」
「Le courrier」
「Le crique」
「Le phare」
【こんな人にお勧め】
意地悪な運命に弄ばれる人間の姿を描いた短編小説集を読みたい方。 シニックなオチのついた短編小説を読みたい方。 多読用。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 3.5/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3.5/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
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