
著者 : Maxime Chattam, Michel Bussi 他
出版社 : Pocket
本の種類 : ペーパーバック
ページ数 : 282頁
1985年に、フランスの著名コメディアン、コリューシュにより設立された、恵まれない人々に食事を提供するNPO『Resto du coeur』の活動支援のため、2017年年末に出版されたオムニバス短編集。
先にブログで紹介した「13 à table ! 2016」、「13 à table ! 2017」と同様、13人のフランスの人気作家が、このプロジェクトのために、無料で書き下ろした短編小説が13編収録されている。
2018年のテーマは『Amitié (友情)』 今回も『友情』をテーマに、サスペンス、恋愛小説、ホームドラマ風な短編、歴史小説風な作品など、バラエティーに飛んだ短編小説が楽しめるラインナップとなっている。
「Tant d'amitié」Françoise Bourdin 著
レストラン経営者とその親友のプレイボーイを巡るお話。 オチは異なるものの、読み始めてすぐにロワルド・ダールの短編を思い出した。 ダールの短編のインパクトが強すぎたため、私には味気なく感じたが、これは好みの問題であろう。
「Je suis Li Wei」Michel Bussi 著
「Nymphéas noirs」でフランス人気推理小説家の位置の躍り出た、Michel Bussi氏による、スパムメール絡みのお話。 アイデアは優れているのだが、ページ数に制限があるためか、細部が疎かのになっているため、物語の信憑性が薄れてしまったのが残念。
「L'Anomalie」Maxime Chattam 著
オチはある程度検討がついてしまったが、夢の中だが、主人公と同じシチェーションを経験した事のある私には、主人公の心理がじわじわと伝わってきた。
「Mon cher cauchemar」Adélaïde de Clermont-Tonnerre 著
短い中に、二人の女性と一人の男の人生がしっかり書き込まれている、長編映画にしても遜色のない短編小説。
「Oeil pour oeil」Françoise d'Epenoux 著
強度近眼で、かつてレーシック手術を受ける事を考えた事のある私には、背筋が寒くなった作品。 レーシックを受けることを考えている人には是非一読していただきたい。
「Best-Seller」Eric Giacometti & Jacque Ravenne 著
この作品もアイデアは悪くはないのだが、もうちょっと、ディテールを説明してもらいたかった
「L'Escalier」Karine Giébel 著
団地ぐらしの少年が主人公の短編。 斬新なプロットではないし、驚きはないものの、なぜか心が癒やされ、何度も読み返したくなる作品。
「Amitié égyptiennes」Christian Jacq 著
エジプト歴史家で、古代エジプトを題材に数々の小説を発表している、人気歴史小説家の Christian Jacq 氏の手による作品。 小説として楽しむというより、歴史的知識を仕入れるために読みたい作品。
「Pyrolyse」Alexandra Lapierre 著
正反対の二人の女性の友情を描いた短編小説。 ネタバレを避けるため、詳しく書くことは出来ないが、人間を知り尽くしている人でなければ書けない、行間を味わいたい、奥行きの深い作品である。
「Bande décimée」Marcus Malte 著
チンピラたちを題材にしたポエム。
「Le monde est petit」Agnès Martin-Lugand 著
「13 à table ! 2016」に収録されている「Merci la maîtresse」の後日談。 「Merci la maîtresse」を執筆した時、著者は、この作品を書くことを予定したいたのではないかと思わるストーリーだが、「Merci la maîtresse」を読んでいなくても、本編を味わう事ができる様、配慮が配られている。
「L'incroyable stylo Bic quatre couleurs de Benjamin Bloom」Romain Puértolas 著
「L'extraordinaire voyage du fakir qui était resté coincé dans une armoire ikea」に匹敵する、荒唐無稽だけど、絶対起こりえないとは言い切れない、ボールペンが主人公のユーモア小説。 面白かったです。
「Zina」Leïla Slimani 著
幼馴染へ対する主人公の女性の複雑な思いが語られる作品。
昨年の年末買い忘れて、最寄りの書店では売り切れになっていた「13 à table 2018」と、なぜかヴァカンスで訪れた避暑地のスーパーの書籍売り場でご対面。 夏季には、人口が10倍に膨れ上がる町なので、去年から売れ残っていたのかしらと思ったのだが、それにしては、他の本は一冊しか陳列されていないのに、この本だけ数冊もあるのは不自然。
この手の短編小説集はヴァカンスで読むのにピッタリだから、このスーパーの仕入れ責任者が、あえてヴァカンス向けに用意したのかもしれない。 だとしたら、この仕入れ責任者は、かなりの読書好きなのであろう。
「13 a table ! 」2018年版も、例年と同様、「こんな優れたアイデアをチャリティー用の作品に惜しげもなく使ってしまう著者は、なんて太っ腹!」とため息のでた、数々の作品が収録されている。
その中でも、私が最も優れていると思ったのは、
「Mon cher cauchemar」と「Pyrolyse」。 全く異なるタイプの作品だが、友情の複雑さを見事に短編小説の枠内に収めた佳作である。 それから、私が最も気に入った作品は「L'Escalier」。 辛いことがあったら、読み返したくなるタイプの短編である。
13人のフランスの人気現代作家の書き下ろし短編小説を読む事が出来る上、
5ユーローの本書一冊を買うことにより、『Resto du coeur』通し4食の食事が提供出来る、という、読書をしながらチャリティーに参加出来る、お得感満点の一冊。
機会があったら、お買い上げいただきたい一冊である。
【こんな人にお勧め】
色々な現代フランス作家の短編小説を読みたい方。 読書を通してチャリティーに参加したい方。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 2.5~4.5/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
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