16:03

著者 : 筒井哲也
翻訳 : David Le Quéré
出版社 : Ki-oon
本の種類 : ソフトカバー(13x2x18)
ページ数 : 232頁
漫画に限らず、日本の作品は出来る事なら日本語で読みたいのだが、電子書籍の海外からのダウンロードに制限がある事もあって、私の様など田舎に住んでいる貧乏人にとっては、日本語の本を入手するのは、かなりハードルが高い。 というわけで、その代替策として、仏語訳の日本語の本を読むことが良くあるのだが、このブログは、日本ではあまり知られていないフランス語の本を紹介するのを目的としているので、その手の本を紹介するのは、特別な理由がない限り避けてきた。
しかし、本書は、漫画が好きな、いや、本が好きな、なるべく多くの人の目に触れるべきではないかしら?と思ったので、あえて紹介する事にする。
東京都青少年の健全な育成に関する条例の改正にまつわる一連の騒ぎは、ネットを通して知っていたが、フランスに住む私は、東京都以外の都市でも、同様な検閲が行われている事は知らなかった。
2015年3月12日に、日本に先駆けて、フランスで出版された「Poison City Vol.1(原題 : 有害都市)」の巻末には、『Les origines du projet』と題された、本書が書かれる事になった契機を綴った、あとがき的なテキストが掲載されている。 そこに、2009年に長崎県少年保護育成条例によって、筒井哲也氏の著作の「マンホール」が有害図書として指定された、との記述があった。
私は「マンホール」を読んだことはあるが、「マンホール」は、ホラー的要素が多いので、グロテスクなシーンは、かなりあるが、過激な暴力シーンや性的表現はない。 だから、それを読んだ時には、
「どうして、この本が18禁指定になるのぉ?」
「 「マンホール」の様な人間社会の矛盾をついた、社会派的な問題提起をしている本を、中高生から取り上げてしまう権利が、誰にあるのぉおお!?」
という疑問が頭を横切った。
『Les origines du projet』には、それに併せ、2014年に著者が「マンホール」有害図書指定の取り消しを陳情するため、著者が長崎県の少年保護育成審議会へ出席した際の審議会の様子も記されているのだが、それを読んで、私は今度は、空いた口が塞がらなかった。
この審議会の様子は、筒井哲也氏のサイト(http://www.pn221.com/nagasaki3.html)に詳しく書かれているので、是非そちらを読んでいただきたいのだが、なんと、
この日、承認事項「有害図書類の指定承認について」の議事の中、新たに審議対象とされた書籍33冊を委員が閲覧するために設けられた時間は、約35分間でした(午後2時5分から午後2時40分まで)。
皆さんは、1冊の本を1分間で読み解くことができるでしょうか。
もちろん内容を把握するだけでなく、それが青少年の健全な育成を阻害するものであるかどうかという、厳格な判断が要求されます。
速読について並外れた能力をお持ちの方でなければ、これは実質的に不可能な作業ではないかと思います。
という、あまりに杜撰な方法で有害図書の選定が行われていたのである。
過激な暴力シーンや、暴力や異常性を伴う性描写を、幼い子供の目に届かぬようにする事を目的とした、少年保護育成条例の存在について、私は異を唱えるつもりは全くない。 むしろ、スプラッターやエログロが非常に苦手な私は、そのような描写がメインの本は、あらかじめ心づもりをしてから読みたいので、表紙にその旨を記してもらったら、ありがたい、とすら思っている。
しかし、6歳の児童と16歳の高校生とでは、理解力も、感受性も、刺激の強い描写によって受ける影響にも、かなり差がある。 それなのに、幼児に読ませたくない本と、ティーンエイジャーに読ませたくない本を『有害図書』と、ひとくくりにしてしまうのには、無理がある。 おまけに、ろくに本を読まずに、あらかじめ印を付けられた箇所だけ確認して、その本が、未成年に『有害』かどうか判断してしまうという選定方法は、創作物を蔑ろにしているように、私には思えてならない。
どうやら、図書の検閲という法律は、危険物と同様、取り扱いには細心の注意が必要であるという、基本的な認識が、長崎県の有害図書審議関係者には欠落しているようである。
この様な、杜撰な有害図書指定方法は、作品だけではなく、日本の文化への冒涜へつながる事を、有害図書審議委員及び、条例を制定する立場にある地方自治体の議員は、自覚する必要があるのではないだろうか?
さて、前置きが長くなってしまったが、そんな経験を踏まえ書かれた本書は、有害図書指定監査員から目をつけられてしまった、やっと連載にこぎつけたホラー漫画を書いている漫画家を主人公にしたフィクション。
となりのヤングジャンプに掲載されている事もあり、作品の内容については、今更、私が書くまでもないので、ここでは割愛するが、絵は上手いし、2重構成になっているストーリーは中々読み応えがあった。
下巻を読んでみないことには、シリーズ全体としての評価は出来ないが、かつてアメリカで行われたコミックに対する検閲など、私が知らない事柄が盛り込まれており、参考になった。
満員の映画館の中で「爆弾が爆発する!」と叫ぶ自由は誰にもない。
表現の自由の名の元に、何でも許させるとは、私は露にも思っていはいない。
しかし、青少年保護育成条例という名の元に、漫画を『不当』に『有害指定』するのは、日本人の創作物を、日本人みずからが冒涜し、日本の大衆文化を衰退へと追い込む行為なのだという意識を、国民は持つべきではないのだろうか?
中国で日本のアニメが多数『有害』指定されたと、騒ぐのもいいけれど、日本でも同様な事が、日本の作家の作品に対して行われている事を、そして、各地方自治体により、有害図書がどんな方法によって選定されているのかを、詳しく調査し、国民に知らせる義務が、メディアにはあるのではないだろうか?
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著者 : Yveline Féray
出版社 : Picquier
本の種類 : ペーパーバック
ページ数 : 193頁
「Contes d'une grand-mère japonaise(日本人のおばあさんのお伽話)」というタイトルから、日本の昔話集を想像して、読み始めたのだが、本書は、昔話は昔話でも、古事記を初めとした、日本の古典に入っているお話を中心に収録した作品集である。
本書の概要を説明した『Avant-conte』、そして585~1989年までの日本の大雑把な年表が記載されている『Chronologie』に続き、古事記の『伊邪那岐命と伊邪那美命』『黄泉の国』『天照大神と須佐之男命』のお話、『鉢木』、『落窪物語』、『ささやき竹』、宇治拾遺物語の『河原院』など、日本の古典から収集したお話や、その他の民話が、7つの章に分けられて、収録されている。
日本の古典や、民話を訳したフランス語の文献から、著者によって選ばれたお話が、収録されているようであるが、余計な解釈や、脚色を交えずに、かつ、フランス人の読者にわかりやすい表現を用いて書かれている所や、フランス語の本には珍しく脚注が豊富で、日本文化特有の単語を無理にフランス語化せずに、ローマ字で記して、後で注を付けるという形が取られている所に、好感が持てた。
又、巻末には、『Séléction bibliographique』として、著者が本書を記すにあたって参考にしたと思われる、日本文化や文学について書かれた書籍や、短編小説集などを中心とした文学作品の仏訳本などを網羅した豊富な参考文献リストが記載されている。
お話の原典や、それがどのような歴史的背景のある時代に、書かれたのかが記述されていれば、フランス人読者への作品のよりよい理解が得られたのではないかと、少々、残念に思う所もあったが、原文を尊重しながらも、読みやすさへ配慮が配られている所が、とてもいいと思った。
Yveline Féray さんには、今度は、是非、今昔物語を、現代フランス語で脚色した作品も書いてもらいたなぁ~等と、思いながら、本書を閉じた。
日本の古典をフランス語で再発見したいとお思いの方に、お勧めしたい一冊である。
【目次】
- Avant-conte
- Chronologie
- Kami yo(l'âge de Kami)
- Hachi no ki(Les arbres en pot)
- Ochikubo no kimi(La dame de la chambre basse)
- Kagami(Le miroir)
- Sasayaki Take(Le bambou murmurant)
- Kawara no in(Le palais de la Grève et son fântome)
- Ao Andon(Le spectre à la lanterne bleue)
- Séléction bibliographique
【こんな人にお勧め】
日本の古典から取られたお話を、現代フランス語に訳した作品を読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
【関連記事】
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- 小説・エッセイ・ノンフィクション
- フランス語レベル中級~上級向け
16:18

著者 : 古川日出男
翻訳 : Patrick Honoré
出版社 : Picquier
本の種類 : ソフトカバー(13x3x21)
ページ数 : 384頁
「IQ84 -Livre Ⅲ」の仏訳を読み終わり、あまりにガッカリしたので、その口直しとして、何か他の日本の小説の仏訳が読みたくて、本書を手に取った。
本書を読み終わり、もし「IQ84」を読まなかったら、本書を読む事もなかったかもしれないと思うと、残念本だった「IQ84」を読んで、やっぱり良かったのかもしれない、と、スッキリした気分になれた、読み応えばっちりの小説だった。
私が本書を気に入ってしまった一番の理由は、人間の従属物としてではない『犬』を軸に添えて小説を書くという、その斬新なコンセプト。
今まで、犬を主人公にした小説は、数多く書かれてきたが、そのほとんどが、人間の従属物として、人間に忠誠を誓うその姿をクローズアップしたものだった。 ところが、本書では、人間世界という枠の中、生きる事を余儀なくされているが、完全に人間の従属物にならず、野生を常に内に隠し持ち、いざという時には、躊躇なくそれを存分に発揮する、様々な犬の姿が描かれている。
本書の内容については、今まで多く語られてきたので、ここで言及するのは避けるが、アリューシャン諸島にある、キスカ島の日本軍撤退後、残された軍用犬4頭が、アメリカ軍に引き取られ、その血を受け継いだ犬たちが、世界中へと散らばり、人間達の歴史と関わり合ってゆく様を描いた、世界を股にかけた広大な叙事詩。 そのコンセプトの斬新さと独創性に加え、生き残る事、そして繁殖する事に全てを賭けた、凄絶な犬たちの生き様と、それを綴った力強い筆致には、圧倒させられた。
とにかく、犬達にバッチリ感動移入してしまい、彼らが、人間世界ではタブー視されている行為を犯しても、嫌悪感を抱くどころか、「そうだ、やれ!」と、応援したくなってしまった。
どの犬の生き様も、凄まじく、私の心に、その跡をしっかりと刻み付けたのだが、本書に登場する、犬に忠誠を誓った人間達の、一般常識では理解し得ない生き方にも、胸をかき乱された。
人間が構築し、管理するシステムに組み込まれているが、チャンスがあれば、野生の牙をむき出し、我が身を徹底的に守る犬たちの姿は、日本の、いや世界中の社畜達に対する、最高のエールであるように、私には思えてならなかった。
【こんな人にお勧め】
固定観念を覆す小説を読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 4/5(易<難)
読みごこち : 3/5(難<易)
フランス語難易度 : 4/5(易<難)
読みごこち : 3/5(難<易)
【関連記事】
2013年5月1日レイアウト修正。
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- フランス語レベル上級向け

企画・監修 : Corinne Quentin & Cécile Sakai
東日本大震災の翌日から、2011年11月までに、日本人の作家、評論家、学者、詩人、歌人、写真家、建築家等により、東日本大震災や原発事故を題材に執筆された論考や作品を集めた一冊。
裏表紙及び、本書冒頭の「Avant-Propos」に、執筆者及び、翻訳家は、本書にボランティアとして参加しており、本書の収益は、東日本大震災の罹災者への義援金として寄付される、と明記されている。
本書を企画した、日仏翻訳家である Corinne Quentin 氏、 Cécile Sakai 氏による「Avant-Propos」、
地理学者であり、フランス、トゥルーズ第2大学の日本語・日本文学の講師である Rémi Scoccimarro 氏による「Note sur l'impacts du séisme et du tsunami du 11 mars 2011 sur le Japon du nort-est」と題された、3月11日の大地震の影響について説明、
「Cendre et Cerisier」と題された、作家であり、フランス、ナント大学文学部の教授である Philippe Forest 氏による、震災、そして本書の概観に続き、
【Les faits】【Essai et Analyse】【Les écrivains réagissent】【Fiction, écrire quand même】【La poésie malgré tout】【Le rire de dsespoire en guise de conclusion】
の、6つの章に分けられた、震災にまつわる、論考、コラム、短編小説、詩歌集等、27篇と、畠山直哉氏が罹災地を撮影した写真8枚が掲載されており、各論考や作品の巻末には、著者の略歴が記されている。
日本語が読めないフランス人を対象としているので、東日本大震災及び原発事故について、ネット等を通して、既に多くの見解を読んでいた私には、あまり目新しいものは無かった。 又、雑誌に掲載された評論が中心となっているため、本書に集められたエッセイが、幅広い日本人の考え方を網羅しているとは、言いがたいように感じられた。
しかし、本書が、フランス人ジャーナリストの目を通してしか、東日本大震災を知らなかったフランス人に、東日本大震災と原発事故を、新しい視点で、見つめ直す事を可能にした貴重な一冊であるのは、紛れも無い事実である。
個人的には、災害を語るその姿勢について言及されていた Philippe Forest 氏の巻頭言、写真家の畠山直哉氏のエッセイ、玄侑宗久氏の記事、そして、管啓次郎氏の詩に 強く心を打たれた。 又、保坂和志氏の論考と、避難所での知られざる一面を描いた、荻野アンナ氏の短編小説も、興味深く読んだ。
そして、何にも増して素晴らしいと思ったのは、最終章に掲載されている、罹災者が詠んだ26篇の川柳。 『結論に代えて』と題し、本書の巻末に、この詠み人知らずの川柳を掲載した事に、Corinne Quentin、Cécile Sakai 両氏の日本文化への愛情と造詣の深さが、滲み出ているように思え、目頭が熱くなった。
本書は、少々堅めのエッセイが多く収録されている、どちらかというと、インテリ向けの本なので、堅い本を読みつけていない人は、しんどいと思われる所もあるのが、ほんのチョッピリ残念に感じられた。
大震災とその後の日本を、幅広いフランス人に、知ってもらうためにも、あまり堅い本を読まない人でも、気軽に読める、マンガや、やわらかめのエッセイ等を収録したアンソロジーも、出版される価値があるのではないだろうか?
それにしても、日本人がこの震災、そして原発事故を、どう考えているか、感じているのかを、フランス人に伝える機会を与えた、この素晴らしい企画を立案した Corinne Quentin、Cécile Sakai 両氏と、Picquier 出版社、そして、本書にボランティアで参加した翻訳家の方々へ、盛大な拍手を送りたい。
あ、書き忘れたが、大震災と原発事故いうテーマを扱っていることもあり、続けて読んでいると、気が滅入るし、息切れがするので、目次を見て、興味を持たれた作品から、ボチボチ読むのに適しているタイプの本である事を付け加えておく。
*Sommaire*
- 「Avant-Propos」
- Corinne Quentin & Cécile Sakai - 「Carte」
- 「Note sur l'impacts du séisme et du tsunami du 11 mars 2011 sur le Japon du nort-est」
- Rémi Scoccimarro - 「Cendre et Cerisier」
- Philippe Forest
【Les Faits】
- 「Le grand séisme de l'est du Japon」(東日本大震災)
- 高橋克彦著、Aude Sugai 訳 、『群像』2011年5月号より - 「Photograhier le vide」(「いい写真」とはなんだろう?)
- 畠山直哉著、Corinne Quentin 訳 、『アサヒカメラ』2011年9月号より - 「Ne pas céder au silence, chasser le sentiment d'impuissance」
- 角田光代著、Isabelle Sakai 訳、『読売新聞』2011年4月21日より
【Essai et Analyse】
- 「La force de l'impermanence et un espoir de l'esprit」
- 石田 英敬著 - 「La centrale nucléaire de Fukushima. Histoire d'un "renoncement à la sécurité" Que sont indépendance, démocratie, transparence devenues ?」
(福島原発、安全からの逃走の果てに 消えた「自主」「民主」「公開)
- 塩谷 喜雄著、 Sylvain Cardonnel 訳、『みすず』2011年5月号掲載 - 「L'optimisme japonais mis à mal」(日本の楽観主義が崩された)
- 姜尚中著、Corinne Quentin訳、『kotoba(コトバ)』 2011年夏号より - 「Nous, peuple de Fukushika - Agitation nécessaire pour vivre dans l'après - 11mars」
(われら「福島」国民 3・11以降を生きるためのアジテーション友常勉 労働=生の境界に際会して 3・11をめぐる備忘録)
- 池田雄一著、Patrick Honoré 訳、河出書房新社編集部 編「思想としての3.11より - 「Le remps sinistré : un seul traitement, sortir du nucléaire」
(時代の風 : 被災した時間)
- 斎藤環著、Cédile Sakai 訳、『毎日新聞』2011年6月19日東京地方朝刊掲載、週刊コラム「時代の風」より - 「Toi, créature de l'autre rive, dis-nous ton nom」
(海のかなたより訪れしもの、汝の名は)
- 赤坂憲雄著、 Coline Selmo 訳、 『群像』2011年5月号より - 「Freinage et déluges」(制動(ブレーキ)・大洪水のこと)
- 宇佐美圭司著、Daniel Hadida 訳、 『世界』2011年5月号より - 「Une maison pour tous」(くまもとアートポリス東北支援「みんなの家」)
- 伊東豊雄著、Corinne Quentin 訳、『新建築』2011年12月号より - 「Le 11 mars et le roman depuis lors」(「3・11」と「その後」の小説)
- 陣野俊史著、Cécile Sakai 訳、『すばる』2011年8月号より
【Les écrivains réagissent】
- 「Adieu au nucléaire !」(さようなら原発)
- 大江健三郎著、Corinne Quentin 訳、 9・19「さようなら原発集会」でのスピーチより - 「Vapeur et grincements」(寝言戯言 19)
- 保坂和志著、Patrick Honnoré 訳『ちくま』2011年8月号より - 「Franchir la barrière de Shirakawa」
- 多和田葉子著、Cécile Sakai 訳、 - 「L'ultime forteresse」(最後の砦)
- 村松友視著、Myriam Dactois 訳、『トランヴェール Train Vert』2011年6月号より - 「La mer Nayuta, cette année au moins, suivis de Vers une pauvreté sereine」
- 池澤夏樹著、Corinne Queintin 訳, 『kotoba(コトバ)』 2011年夏号より - 「Le goût de Fukushima」
- 関口涼子著 - 「Il n'y a rien à dire, mais c'est ici que le chemin commence」
(何も言えない、でもここが未知の原点) 『kotoba(コトバ)』 2011年夏号より - 「Je traine ton ombre」
(あなたの影をひきずりながら)『河北新報』2011年3月30日版のインタビュー
- 玄侑宗久著、Corinne Quentin 訳
【Fictions, écrire quand même】
- 「Splendeur et misère de la littérature japonaise - la littérature d'après-guerre - 17e épisode」(日本文学盛衰史 戦後文学篇[17])
- 高橋源一郎著、Myriam Dartois 訳、 『群像』2011年5月号より - 「Le grand séisme, entre désir et morale」(大震災欲と仁義)
- 荻野アンナ著、Myriam Dartois 訳、 「大震災欲と仁義」より - 「La mer tranquille de l'ours brun」(ヒグマの静かな海)
- 津島佑子著、Anne Bayard-Sakai 訳、『新潮』2011年12月号より
【La poésie malgré tout】
- 「Haiku - Tsunami et réacteur nucléaire」(津波と原子炉)
- 夏石番矢著、Cécile Sakai 訳, 『吟遊』55号 2011年5月15日号より - 「Annonce à l'umanité」(人類に告ぐ)
- 石井 辰彦著、関口涼子&Cécile Sakai 訳, 歌集『詩を弃て去つて』より - 「Les vagues absentes」(非在の波)
- 管啓次郎著、Corinne Quentin 訳, ユリイカ 2011年5月号より - 「On a allumé la bougie」(ろうそくがともされた)
- 谷崎俊太郎著、Véronique Brindeau 訳, 『ろうそくの炎がささやく言葉』より
【Le rire du désespoir - En guise de conclusion】
- 「Quelques senryû d'habitants de Minami-Sanriku」
- 南三陸の住民 著、Corinne Quentin & Cécile Sakai 訳
【こんな人にお勧め】
日仏翻訳の勉強用。 東日本大震災及び原発事故についてフランス語で話す機会のある方。 フランス語の勉強をしながら東日本大震災罹災者へ寄付したい方。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 2-4/5(易<難)
読みごこち : 2-4/5(難<易)
フランス語難易度 : 2-4/5(易<難)
読みごこち : 2-4/5(難<易)
【外部リンク】
2013年5月4日レイアウト修正。
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- フランス語レベル上級向け
♥ Coup de coeur ♥
「notes de japonais 1
」
著者 : Nobuko & Osamu Mizutani
翻訳 : Renée Lagache-Horiuchi & Marie-France Delmont-Hosaka
出版社 : The Japan Times.Ltd.
本の種類 : ソフトカバー(11x1x18)
ISBN : ISBN4-7890-0270-5
ページ数 : 106頁
1976年8月1日~1976年11月27日まで、Japan Times で、『Nihongo Notes』のタイトルで掲載されたコラム75編を集め、巻末に日常会話表現集を付け加えた、「Nihongo Notes 1 - speking and living in Japan 」の仏語版。
ネイティブでない者には、分かりづらい日本語独特の表現を取り上げ、その使い方と、どうしてそういう言い方がされるのか、端的な説明が付け加えられている。
英語やフランス語に訳しにくい「どうも」「いって(い)らっしゃい」「おかげさまで」「やっぱり」「こちらこそ」等の使い方、
「知りません」と「分かりません」や、「よいお年を」と「明けましておめでとうございます」の違い、
「主人がお世話になっております」「一応お預かりします」など、日本語特有の言い回しについて、
「いいえ」「ちょっと・・・」「おねえさん」「あなた」「実は」など、英語やフランス語の訳語とは、違ったニュアンスで用いられる言葉、
「はい、おりますが・・・」「私ですが・・・」など、最後まで文を終わらせない会話の仕方についての説明、
「赤ん坊に泣かれた」など、迷惑を被った場合には受動形が使われる事、
主語や、目的語の省略について、
等など、普段何気なく使っているけれど、言われてみれば、外国人には、やっぱり分かりづらいのでは・・・と言いたくなる、日本語表現を取り上げ、その使い方や、どうしてそういう言い方をするのか、説明が付け加えられている。
一箇所、フランス語のAccentが抜けている所があったり、どうせなら、ローマ字だけでなくて、ひらがなや漢字で日本語部分は記してもらいたかったとか、「ご苦労様」と「お疲れ様」の違いにも言及して欲しかったと、言いたくなる「Gokuro-sama」の項など、ほんのちょっぴり、残念に感じた所もあった。
しかし、本書が、日本人が見落としがちな、日常頻繁に使われる、外国人には理解しがたい特殊な日本語を、ピックアップし、簡潔な説明を付ける事により、日本語の奥深さと、日本人気質を垣間見せる事に成功した、秀逸なエッセイ本である事は、まぎれの無い事実である。
日本語の教習本ではないが、ある程度日本語を学んだ外国人の副読本として最適な、実用書としても使える、日本語を勉強している外国人向けの日本語に関するエッセイ集である。
日本語を勉強しているフランス人に、本書を貸す度に、よく出来ていて、役に立つ本だと大好評。 どこで買えるかと聞かれる度に、本書が絶版となっている旨を伝えねばならないのが、心苦しいので、Japan Times さんには、是非、再版をご検討して頂きたい。
漫画付きで、新装再版などしたら、フランス人オタクに、かなり受けるのではないかと、私は思うのだが・・・
*Table des matières
【こんな人にお勧め】
【きわめて個人的な本の評価】
2013年4月19日にレイアウト修正。

著者 : Nobuko & Osamu Mizutani
翻訳 : Renée Lagache-Horiuchi & Marie-France Delmont-Hosaka
出版社 : The Japan Times.Ltd.
本の種類 : ソフトカバー(11x1x18)
ISBN : ISBN4-7890-0270-5
ページ数 : 106頁
1976年8月1日~1976年11月27日まで、Japan Times で、『Nihongo Notes』のタイトルで掲載されたコラム75編を集め、巻末に日常会話表現集を付け加えた、「Nihongo Notes 1 - speking and living in Japan 」の仏語版。
ネイティブでない者には、分かりづらい日本語独特の表現を取り上げ、その使い方と、どうしてそういう言い方がされるのか、端的な説明が付け加えられている。
英語やフランス語に訳しにくい「どうも」「いって(い)らっしゃい」「おかげさまで」「やっぱり」「こちらこそ」等の使い方、
「知りません」と「分かりません」や、「よいお年を」と「明けましておめでとうございます」の違い、
「主人がお世話になっております」「一応お預かりします」など、日本語特有の言い回しについて、
「いいえ」「ちょっと・・・」「おねえさん」「あなた」「実は」など、英語やフランス語の訳語とは、違ったニュアンスで用いられる言葉、
「はい、おりますが・・・」「私ですが・・・」など、最後まで文を終わらせない会話の仕方についての説明、
「赤ん坊に泣かれた」など、迷惑を被った場合には受動形が使われる事、
主語や、目的語の省略について、
等など、普段何気なく使っているけれど、言われてみれば、外国人には、やっぱり分かりづらいのでは・・・と言いたくなる、日本語表現を取り上げ、その使い方や、どうしてそういう言い方をするのか、説明が付け加えられている。
一箇所、フランス語のAccentが抜けている所があったり、どうせなら、ローマ字だけでなくて、ひらがなや漢字で日本語部分は記してもらいたかったとか、「ご苦労様」と「お疲れ様」の違いにも言及して欲しかったと、言いたくなる「Gokuro-sama」の項など、ほんのちょっぴり、残念に感じた所もあった。
しかし、本書が、日本人が見落としがちな、日常頻繁に使われる、外国人には理解しがたい特殊な日本語を、ピックアップし、簡潔な説明を付ける事により、日本語の奥深さと、日本人気質を垣間見せる事に成功した、秀逸なエッセイ本である事は、まぎれの無い事実である。
日本語の教習本ではないが、ある程度日本語を学んだ外国人の副読本として最適な、実用書としても使える、日本語を勉強している外国人向けの日本語に関するエッセイ集である。
日本語を勉強しているフランス人に、本書を貸す度に、よく出来ていて、役に立つ本だと大好評。 どこで買えるかと聞かれる度に、本書が絶版となっている旨を伝えねばならないのが、心苦しいので、Japan Times さんには、是非、再版をご検討して頂きたい。
漫画付きで、新装再版などしたら、フランス人オタクに、かなり受けるのではないかと、私は思うのだが・・・
*Table des matières
- Dochira-e ? (Où allez-vous ?)
- Iie (Non)
- Nomitai-desu-ka ? (Vous désirez boire quelque-chose?)
- Aizuchi (Comment les Japonais vous écoutent)
- Konnichiwa (Bonjour)
- Raishawaa-San(M.Reischauer)
- Gurai, hodo, bakari (Environ, approximativement, à peu près)
- Doomo(Vraiment)
- Ikaga-desu-ka (Comment allez-vous?)
- Hai, orimasu-kedo(Oui, il est là, mais...)
- Anata(Tu, vous)
- Shitsuree-shimasu(Excusez-moi)
- Motte-kimasu?(Je vous l'apporterai)
- Yaseru hito?(Une personne en train de maigrir)
- Soo-desy-ne. Soo-desu-yo.(Vraiment, vraiment.)
- Kaette-kudasai(Retournez chez vous)
- Aa, are-desu-ka(Ah, ça...?)
- Shujin = shujin ?(Mari = prisonnier ?)
- Akanboo-ni nakareta (J'ai été "pleuré" par le bébé)
- Senjitsu-wa gochisoosama-deshita (Merci pour votre invitation de l'autre jour)
- Koko-de tomete-kudasai (s'il vous plaît , arrêtez ici)
- Doozo yoi otoshi-o (Je vous souhaite une bonne année)
- Akemashite omedetoo-gozaimasu (Bonne année)
- Itadakimasu (J'accepte volontiers, merci)
- Shirimasen(Je ne sais pas)
- Onegqi-shimasu (S'il vous plaît)
- Oneesan ("Grande soeur")
- Itte-(i)rasshai (Allez et revenez, s'il vous plaît)
- Taihen-desu-ne (C'est terrible)
- Ocha-o doozo (Prenez un peu de thé)
- Ojama-shimasu(Je vais vous déranger)
- Moo kaeranakucha (Je vais rentrer chea moi maintenant)
- Okagesama-de (Merci à vous)
- Kochira-koso (C'est plutôt à moi de le dire)
- Shujin-ga osewa-ni natte-orimasu (Merci d'avoir pris bon soin de mon mari)
- Anoo...(Excusez-moi)
- Jitsu-wa...(Eh bien.....)
- Ichioo oazukari-shimasu (Je le garde pour le moment)
- Ah, soo-ka.... soodesu-ka(Ah, je vois.... Vraiment ?)
- Nikkoo-e ikitai-desu (Je veux aller Nikko)
- Yomoo-to omoimasu (Je compte les lire)
- Yappari...(Tout compte fait)
- Burabura shite-imashita (J'ai traîné un peu)
- Ocha-demo nomimasenka (Si nous prenions une tasse de thé)
- Chotto....(Un peu)
- Extraits du journal de M.Lestude
- Sumimasen(Excusez-moi)
- Extraits du journal de M.Lestude
- Extraits du journal de M.Lestude
- Sanjippun-shika arimasen-kara (Comme je n'ai qu'une demi-heure)
- Aizuchi-no uchikata (Comment employer correctement les Aizuchi)
- Extraits du journal de M.Lestude
- Gokuroosama (Excusez-moi de vous avoir dérangé)
- Soo yuu wake-desu-kara.... (Telle est la situation)
- Kaettara sugu denwa-shimasu (Je vousd téléphonerai sitôt rentré)
- Extraits du journal de M.Lestude
- Kowashimashita (Je l'ai cassé)
- Extraits du journal de M.Lestude
- Dekiru-kashira (Je me demande si vous pourrez le faire)
- Uchi-wa motto hidoi-n-desu-yo (Chez nous c'est pire encore)
- Nihongo-ga ojoozu-desu-ne (Vous parlez très bien japonais)
- Benkyoo-ni narimashita (Ca m'a appris beaucoup de choses)
- Ee, maa, nantoka (Oh ! je me débrouille plus ou moins)
- Extraits du journal de M.Lestude
- Itsudemo ii-desu (Quand vous voudrez...)
- Osabishii-deshoo-ne (Vous devez vous sentir bien seul)
- Soo-desu-ne (Ah ! oui, ....)
- Otagaisama-desu (Nous sommes tous les deux dans le même cas)
- Expressions de la vie quotidienne
- Index des mots, expressions et phrases
【こんな人にお勧め】
フランス語圏の外国人に、日本を教えている方。 日本語を勉強中のフランス人へのプレゼント用。 日本語独特の表現を、フランス語で説明した本を読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4.5/5
フランス語難易度 : 2/5(易<難)
読みごこち : 5/5(難<易)
フランス語難易度 : 2/5(易<難)
読みごこち : 5/5(難<易)
2013年4月19日にレイアウト修正。
- Category
- 小説・エッセイ・ノンフィクション
- フランス語レベル初級~中級向け
21:47

著者 : 乙一
翻訳 : Y.Minemori, P.Honnoré
出版社 : Editions Milan
本の種類 : ソフトカバー(13x3x16)
ページ数:371頁
乙一氏の著作は、日本語で3冊読んだことがあるのだが、残念な事に、どの小説も、私はあまり好きになれなかった。 だから、日本語の本を入手するのが、とっても高くついてしまう、フランスの外国の田舎暮らしという事もあり、それ以来、乙一氏の作品とは、疎遠になっていた。
そんなわけで、図書館の児童書コーナーで、偶然目に入った本書を見た時も、一時は借りるのを、躊躇したものの、読んでみて、
「借りてよかった!2、3冊読んだだけで、作家を判断してしまうのは、間違いだった」
と悟った。
怪盗ルパンを思わせる、ドロボウをめぐる、子供向けのサスペンス物なのだが、こんな展開は子供向けじゃないから、とか、子供には分からないかもしれないから、などど、手加減しないで書かれている所が、児童文学にしては、とても新鮮に感じられた。
そして、テンポよく展開し、後から後へと、新真実が明らかになるので、推理、サスペンス物は、食傷気味で、読み始めても途中で挫折してしまう事が、往々にしてある私でも、最後まで読み切ることが出来た。 子供向けなので、はじめから、なんとなく、終着点が予想出来てしまったが、それは、作品を楽しむ妨げにはならなかった。
主人公の Lindt を初めとした、登場人物達の名前がチョコレートメーカーの名前だったり、チョコレートにちなんだネーミングになっているという趣向は、面白いけど、 Lindt は、フランスでも沢山売っているけれど、その他のフランスの子供に馴染み深い、フランスのチョコメーカーの名前が無いが、チョッピリ残念。
全370頁と長めだが、平易なフランス語で書かれているので、フランス語文法を、一通り学んだ方の多読用、日本語版と併せて仏訳の勉強にと、フランス語学習用に、色々活用出来る一冊ではないかと思った。
【こんな人にお勧め】
フランス人の子供へのプレゼント用。 児童文学が好きな方。 多読用。 仏訳の勉強用。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 2/5(易<難)
読みごこち : 5/5(難<易)
フランス語難易度 : 2/5(易<難)
読みごこち : 5/5(難<易)
2012年1月31日に加筆修正。 2013年5月21日にレイアウト修正。
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- フランス語レベル中級向け

「1Q84 - Livre 1, Avril-Juin
ページ数: 533頁

「1Q84 - Livre 2, Juillet-Septembre
ページ数: 529頁
著者 : 村上春樹
分類 : 日本の作品、日本が舞台、仏訳本、ファンタスティックス系小説
翻訳 : Hélène Morita
出版社 : Belfond
本の種類 : ソフトカバー(15x3x23)
かつては私のお気に入りの作家だった、村上春樹氏の作品を読まなくなって久しい。
「風の歌を聴け」で、心惹かれるものを感じて以来、長い間、村上春樹氏は、私のお気に入りの作家だった。 しかし、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」で極みに達したのを最後に、それ以降発表された村上氏の著作は、ゆるいカーブ描きながら、下降しつつあるように、私には、感じられてならなかった。
それでも、日本に住んでいたのなら、村上氏の著作を手に取る機会はあったかもしれない。 しかし、わざわざ高価な送料を払い、フランスに取り寄せた数冊の作品に、かつて感じたときめきを見いだせなかった失望が、私を村上氏の作品から遠ざけていた。
かつて私が愛読した、村上氏の短篇集の仏語訳を読む機会もあったが、初期の村上春樹氏の作品の魅力は、感動詞を効果的に用い、日本語の持つ特異性を十二分に引き出した独特な語り口にあり、それを外国語に置き換えるのは、不可能である事を思い知らされた結果に終わった。 そして、それ以降、仏語版で、村上氏の著作を読む事も断念した。
だから、フランスで、日本語が原語の小説では、私の知る限り、近年初めて、ベストセラー入りした本書を、書店や、スーパーの本売り場で見かけた時も、「どうせ、読むなら日本語で」と、自分に言い聞かせた。 そんな訳で、偶然に、本書が、手元に舞い込んできた時も、一時は躊躇したものの、結局誘惑に勝てず、読み始めてしまった。
期待はするまい、気に入らなかったら、途中で止めて、日本語で読み直そう、そう自分に言い聞かせ、本を開いた。 1巻目は、少々退屈に思える所もあったが、2巻目に入ると、殆ど一気にラストまで読み下してしまった。
芳ばしく、軽やかだけど、心に寄り添いながら、よどみなく流れてゆく村上春樹氏特有の文体を、本書では、感じる事はなかったが、これは、日本の読者も、往々にして指摘している事なので、翻訳のせい、というより、「三人称」で書かれた事による所が大きいようだ。
しかし、平易なフランス語で書かれている Hélène Morita 氏の訳文には、村上春樹氏の文体に見られる、なめらかさを感じ取ることが出来た。 原作を読んでいないからかもしれないが、かつて読んだ村上氏の仏語訳を読んだ時の様な、違和感を感じる事はなかった。
ただ、村上氏も、年取ったなぁ、と言いたくなるような、同じ所をグルグルと回っている様な叙述には、少々うんざりさせられた。 これでは、第1巻で挫折してしまった、フランス人読者がいるのも、無理はないなぁ・・・とも思った。
第3巻の仏訳版は、まだ出版されていないので、作品全体に対する評価を下すことは、出来ないが、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を凌ぐ作品になる事は、無いだろうとは、思うものの、第3巻を読まずには、いられない、そんな気持ちで、第2巻を閉じた。
来年3月に予定されている、仏訳版第3巻の刊行が楽しみ。
【こんな人にお勧め】
日本の作品をフランス語で読んでみたい方。 翻訳、仏作文の勉強用。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 3.5/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
【関連記事】
2013年5月23日にレイアウト修正。
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15:22
♥ Coup de coeur ♥

「La Pierre et le Sabre
」

「La Parfaite lumière
」
著者 : 吉川英治
分類 : 歴史小説、仏訳本、日本の作品、多読、お勧め本、日本が舞台
翻訳 : Léo Dilé
出版社 : J'ai lu
本の種類 : ペーパーバック
日本びいきのフランス人の間で、密かなロングセラーとなっている、吉川栄治氏の「宮本武蔵」の仏語訳。
日本語版では、全巻文庫本8冊になりますが、仏語バージョンでは、分厚いペーパーバック2冊にまとめられています。 第1巻が全857ページ、第2巻が696ページで、小さめの活字で印刷されているので、ボリュームはあるのだけれど、大変読みやすいフランス語で書かれているので、完読するのに、さほど時間はかかりませんでした。
内容は、今更私が書くまでの事はないので、避けますが、新聞の連載小説だけあって、山場が多いし、リズム感があるし、楽しみながら、武士道の基本に触れた気になれるので、漫画世代のフランス人の間でも、かなり人気がある作品です。
日本の小説の仏訳は、ぼちぼち出ているのだけれど、やはり純文系が中心。 日本のエンタメ系の小説の翻訳は、数えるほどしか出版されていないし、時代小説の翻訳は、ほとんど出版されていません。
司馬 遼太郎著の「新史太閤記」が「Hideyoshi, Seigneur singe」のタイトルで出版されていますが、これは、
「司馬 遼太郎の文章って、こんなに難解だったかしら?」
と、首をひねりたくなる、フランス語の長編小説を読むのが全く苦にならならず、日本の小説に飢えている私ですら、途中でダウンしてしまうほどの、七面倒で、リズム感に乏しいフランス語で書かれている、読み辛い事この上ない難解本。
そんな中、本書は、私が見つけた、唯一の、フランス語に訳された、手軽に読める、日本の時代小説なので、日本の武士文化に興味を持っているフランス人や、宮本武蔵の生涯をフランス語で読んでみたいなんて、お思いの方に、お勧めしたい一冊です。
【こんな人にお勧め】
【きわめて個人的な本の評価】
【関連記事】
2012年4月6日にレイアウト修正。

「La Pierre et le Sabre
ページ数 : 857頁

「La Parfaite lumière
ページ数: 695頁
著者 : 吉川英治
分類 : 歴史小説、仏訳本、日本の作品、多読、お勧め本、日本が舞台
翻訳 : Léo Dilé
出版社 : J'ai lu
本の種類 : ペーパーバック
日本びいきのフランス人の間で、密かなロングセラーとなっている、吉川栄治氏の「宮本武蔵」の仏語訳。
日本語版では、全巻文庫本8冊になりますが、仏語バージョンでは、分厚いペーパーバック2冊にまとめられています。 第1巻が全857ページ、第2巻が696ページで、小さめの活字で印刷されているので、ボリュームはあるのだけれど、大変読みやすいフランス語で書かれているので、完読するのに、さほど時間はかかりませんでした。
内容は、今更私が書くまでの事はないので、避けますが、新聞の連載小説だけあって、山場が多いし、リズム感があるし、楽しみながら、武士道の基本に触れた気になれるので、漫画世代のフランス人の間でも、かなり人気がある作品です。
日本の小説の仏訳は、ぼちぼち出ているのだけれど、やはり純文系が中心。 日本のエンタメ系の小説の翻訳は、数えるほどしか出版されていないし、時代小説の翻訳は、ほとんど出版されていません。
司馬 遼太郎著の「新史太閤記」が「Hideyoshi, Seigneur singe」のタイトルで出版されていますが、これは、
「司馬 遼太郎の文章って、こんなに難解だったかしら?」
と、首をひねりたくなる、フランス語の長編小説を読むのが全く苦にならならず、日本の小説に飢えている私ですら、途中でダウンしてしまうほどの、七面倒で、リズム感に乏しいフランス語で書かれている、読み辛い事この上ない難解本。
そんな中、本書は、私が見つけた、唯一の、フランス語に訳された、手軽に読める、日本の時代小説なので、日本の武士文化に興味を持っているフランス人や、宮本武蔵の生涯をフランス語で読んでみたいなんて、お思いの方に、お勧めしたい一冊です。
【こんな人にお勧め】
日本の小説のフランス語訳に興味のある方。 日本の時代小説をフランス語で読んでみたい方。 本場のサムライ小説を読みたいフランス語を解する外国人。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
【関連記事】
2012年4月6日にレイアウト修正。
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- 小説・エッセイ・ノンフィクション
- フランス語レベル中級~上級向け
23:57
♥ Coup de coeur ♥
「Les yeux precieux du serpent
」
著者 : 柳田国男
出版社 : Serpent à plumes
本の種類 : ペーパーバック
ページ数 : 255頁
今日ご紹介するのは、柳田国男の民話集の仏語訳。 「おむすびころりん」「こぶとりじいさん」「どうして海の水はからいの?」、「飯食わない嫁さん」等などの、とてもなつかしい、日本の昔話が全部で105編収録されている「フランス人に日本の民話を教えてあげたいけど、どんな単語を使えばいいの?」なんていう時に、とっても重宝したペーパーバック本です。
子供の頃によく読んだ話から、こんな話知らなかったよん、というのやら、「Le vieux qui répendait des cendres」みたいに、「花咲き爺さん」と良く似ているけれど、これは、全然別の話。 そんな、私が知ってる話と、とっても良く似てるけど、オチが違うよん、といったお話等など、色々な民話が収録されています。
ユーモラスなのも、幾つかあるので、うまくアレンジしたらテーブルジョークになるかも・・・、なんていうお話も2、3ありました。 それ以外のお話でも、以前、手持ち無沙汰の時に、フランス人に、この本に載っていた話をしたら、とても喜ばれましたヨ。
同じようなトーンの民話が初めから終わりまで続くので、通して読むのでなく、気が向いたタイトルのものを、少しずつ読んでみるのに適している本です。
日本の民話のフランス語訳に、興味をお持ちの方なら、フランス語のレベルにかかかわらず、楽しめるのではないかと思いました。
ところで、私が持ってる本には、誤植があって、数箇所「village」 が 「vinage」と、印刷されている所がありましたので、もし、お手持ちの本の中に「vinage」という単語が出てきたら、これは、「village」 の事ですので、ご注意を。
【こんな人にお勧め】
【きわめて個人的な本の評価】
2010年8月20日に一部加筆修正。 2012年4月8日にレイアウト修正。

著者 : 柳田国男
出版社 : Serpent à plumes
本の種類 : ペーパーバック
ページ数 : 255頁
今日ご紹介するのは、柳田国男の民話集の仏語訳。 「おむすびころりん」「こぶとりじいさん」「どうして海の水はからいの?」、「飯食わない嫁さん」等などの、とてもなつかしい、日本の昔話が全部で105編収録されている「フランス人に日本の民話を教えてあげたいけど、どんな単語を使えばいいの?」なんていう時に、とっても重宝したペーパーバック本です。
子供の頃によく読んだ話から、こんな話知らなかったよん、というのやら、「Le vieux qui répendait des cendres」みたいに、「花咲き爺さん」と良く似ているけれど、これは、全然別の話。 そんな、私が知ってる話と、とっても良く似てるけど、オチが違うよん、といったお話等など、色々な民話が収録されています。
ユーモラスなのも、幾つかあるので、うまくアレンジしたらテーブルジョークになるかも・・・、なんていうお話も2、3ありました。 それ以外のお話でも、以前、手持ち無沙汰の時に、フランス人に、この本に載っていた話をしたら、とても喜ばれましたヨ。
同じようなトーンの民話が初めから終わりまで続くので、通して読むのでなく、気が向いたタイトルのものを、少しずつ読んでみるのに適している本です。
日本の民話のフランス語訳に、興味をお持ちの方なら、フランス語のレベルにかかかわらず、楽しめるのではないかと思いました。
ところで、私が持ってる本には、誤植があって、数箇所「village」 が 「vinage」と、印刷されている所がありましたので、もし、お手持ちの本の中に「vinage」という単語が出てきたら、これは、「village」 の事ですので、ご注意を。
【こんな人にお勧め】
日本の昔話をフランス語で読んでみたい方。 フランス語初級者。 多読用。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 2/5(易<難)
読みごこち : 4.5/5(難<易)
フランス語難易度 : 2/5(易<難)
読みごこち : 4.5/5(難<易)
2010年8月20日に一部加筆修正。 2012年4月8日にレイアウト修正。
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- 小説・エッセイ・ノンフィクション
- フランス語レベル初級~中級向け
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フランスの出版社の依頼により、現代の日本を代表する作家が書き下ろした、東京の街が舞台にした短編小説を集めた、オムニバス作品集。
村松友視氏が、ちょっと過去にワケアリの女性を話題に、飲み屋で語り合う深川に住む男性達の姿を書いた「Yumeko」
盛田隆二氏による、新宿の風俗で働く東南アジア人の女の子と予備校生の話「Les Fruits de Shinjyuku」
林真理子氏が、青山を舞台に、流行を追いかけ、恋人すら人の目を通してしか、判断することの出来ない女性の姿を描いた 「Amants pour un an」
椎名まこと氏による、現座の真ん中でテントを張って生活する羽目になったサラリーマンが主人公のちょっと変わった視点から銀座を描いた「La tente jaune sur le toit」
藤野千夜氏による、パニック症状の主婦を中心にそえ、下高井の交番と新宿都庁テーマにした「Une ménagère au poste de police」
欧米人の目から見た東京は、エキゾティックな国際都市の様、色々な国の作家が、東京や日本を舞台にした作品を書いています。
この手の作品は、外国人から見た日本を知るという意味では、いいかもしれませんが、読んでいて、「日本の滞在経験がない人がこれを読んで、そのまま鵜呑みにされたら、ちょっとねぇ・・・」という、描写にぶつかることが皆無だとは言えません。
そんな意味では、この企画は、日本の現代作家をフランスに紹介すると同時に、日本人から見た現代の東京の姿をフランス人に伝えることが出来るので、中々優れた企画だと思いました。
私は、個人的には、銀座を変わった角度から書いた、椎名まことの「La tente jaune sur le toit」が、一番のお気に入り。
企画はとってもいいのですが、私としては、町と作家の選出には、ちょっと不満。
盛田隆二の新宿も悪くないけれど、私は、新宿は、やはり、「不夜城」の馳 星周に書いてもらいたかったし、
「池袋ゲートパーク」シリーズの石田衣良が書く池袋は、MUST。現在の東京の若者を語る上では絶対外してもらいたくない。
あと、浅草界隈の下町は、やはり、宮部みゆきに書いてもらいたかったなぁ。
それから、日本の政治経済を支える兜町や、丸の内がないのは片手落ち。ここは、清水一行あたりの経済小説に強い作家に依頼したい。
それから、お屋敷が並ぶ、成城か、田園調布も東京の一部。これは、お嬢様が大人になるイニシエーション小説を欠かせたらピカイチの渡辺容子に、
又、それとは対照的な山谷街、も欠かすわけにはいかないし・・・
等と、ベットの中で考え始めたら、目がさえてきてしまい、眠れなくなってしまいました。
この本の日本語版は東京小説
【こんな人にお勧め】
日本の小説の仏語訳に興味のある方。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 | : | (3/5) | |
フランス語難易度 | : | (3/5) | 易<難 |
読みごこち | : | (3/5) | 難<易 |
2010年5月12日に一部加筆修正。
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