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♥ Coup de coeur ♥
「Un aller simple - Prix Goncourt 1994
」
著者 : Didier Van Cauwelaert
出版社 : Livre de Poche
本の種類 : ペーパーバック
ページ数 : 128頁
赤ん坊の時にジプシーに拾われ、マルセイユで育った、カーラジオの盗みを生業としている19歳になる Aziz と、ロレーンヌ地方の貧しい鋳造工を父親に持つ、パリの高級官僚の Jean-Pierre という二人の男がこの小説の主人公。
Aziz は、盗みに専念し、育て親に恩返しするため、中学校を中退した。
Aziz は、彼が学業を断念するのを惜しんだ中学校の社会科の教師から送られた世界の地理と神話が書かれた本を宝物のようにしている。
戸籍のない Aziz は、偽造身分証明書を偽造屋から購入するが、経費節約のため、彼が買ったのは、モロッコ国籍の偽造身分証明書。
盗みで、やっと一人前と、ジプシー仲間の間で認められ、四苦八苦の末、恋人の父親を説得する事に成功し、意中の Lila との婚約にこぎつげたが、運悪く、婚約パーティーの真っ最中に現れた警官に逮捕されてしまう。
逮捕の理由は、宝石泥棒。
彼が婚約指輪を買った、宝石商兼、身分証明書類の偽造屋兼、情報屋が、彼に指輪を盗まれたと、警察に密告したらしい。
盗みを生業としているものの、婚約指輪は、正直に金を出した買った Aziz は、宝石商を嘘つき呼ばわりするが、誰も彼に耳を貸そうとしない。
おまけに、彼は、フランス政府が、試験的に始めた、不正滞在者の強制送還システムの第1号として選ばれてしまう。
フランス政府は、強制送還者が自国で成功している前例を作り、このシステムが『人道的』にも正しい事をメディアに、印象づける事が必要と考え、高級官僚のJean-Pierre を、Aziz の帰国に同行させることにする。
「Aziz に仕事を見つけ、強制送還された不法滞在者が、帰国後成功しているという実歴を作れ」
との任務を受けた Jean-Pierre と共に、Aziz は、見知らぬモロッコへ、『帰国』する羽目になってしまったのだが・・・
口がうまくて、物事を丸くおさめるためなら、嘘がすらすら口から出てくる Aziz と、生真面目で、不器用なため、人生に行き詰まりを感じている Jean-Pierre を中心に、展開するストーリーは、意外性に満ちており、予想もつかない方向へどんどん、読者を誘い込んでゆきます。 軽快な語り口には、ユーモアがたっぷり盛り込まれており、何度も声を出して笑ってしまいました。 そして、作品全体に漂う人間に向けられたやさしい視線がとても心地いい、とっても不思議な魅力を持つ小説です。
本を閉じた後でも、作中人物の気持ちが、いつまでも心に引っかかったままで、消える事なく、作品の一場面が、時折ふと、まるで自分が体験した事のように、頭の中に蘇り、心をきゅんとさせてしまいます。 そんな、読み終わった後、後を引く小説。
今まで、読んだ Didier Van Cauwelaert 氏の作品で、私が、一番好きな作品です。
出来るだけ予備知識なしで、この作品を発見してもらいたい、そんな作品なので、詳しいことは書きませんが、小説好きの方なら、読んでみて、絶対損をしない、そう断言できる作品だと思います。
この作品は、1994年に初版出版され、その年のゴンクール賞を受賞しています。
現在では、考えも及びつかないことですが、フランスの世論が、不法滞在者を強制送還するのに、ためらいを感じていた、そんな20年前のフランスの社会背景もおぼろながらに、伝わって来て、複雑な思いを感じずにはいられませんでした。
【こんな人にお勧め】
【きわめて個人的な本の評価】
【関連記事】
【外部リンク】
2010年7月6日に一部加筆修正。2013年4月1日にレイアウト修正。

著者 : Didier Van Cauwelaert
分類 : ゴンクール賞、お勧め小説
出版社 : Livre de Poche
本の種類 : ペーパーバック
ページ数 : 128頁
赤ん坊の時にジプシーに拾われ、マルセイユで育った、カーラジオの盗みを生業としている19歳になる Aziz と、ロレーンヌ地方の貧しい鋳造工を父親に持つ、パリの高級官僚の Jean-Pierre という二人の男がこの小説の主人公。
Aziz は、盗みに専念し、育て親に恩返しするため、中学校を中退した。
Aziz は、彼が学業を断念するのを惜しんだ中学校の社会科の教師から送られた世界の地理と神話が書かれた本を宝物のようにしている。
戸籍のない Aziz は、偽造身分証明書を偽造屋から購入するが、経費節約のため、彼が買ったのは、モロッコ国籍の偽造身分証明書。
盗みで、やっと一人前と、ジプシー仲間の間で認められ、四苦八苦の末、恋人の父親を説得する事に成功し、意中の Lila との婚約にこぎつげたが、運悪く、婚約パーティーの真っ最中に現れた警官に逮捕されてしまう。
逮捕の理由は、宝石泥棒。
彼が婚約指輪を買った、宝石商兼、身分証明書類の偽造屋兼、情報屋が、彼に指輪を盗まれたと、警察に密告したらしい。
盗みを生業としているものの、婚約指輪は、正直に金を出した買った Aziz は、宝石商を嘘つき呼ばわりするが、誰も彼に耳を貸そうとしない。
おまけに、彼は、フランス政府が、試験的に始めた、不正滞在者の強制送還システムの第1号として選ばれてしまう。
フランス政府は、強制送還者が自国で成功している前例を作り、このシステムが『人道的』にも正しい事をメディアに、印象づける事が必要と考え、高級官僚のJean-Pierre を、Aziz の帰国に同行させることにする。
「Aziz に仕事を見つけ、強制送還された不法滞在者が、帰国後成功しているという実歴を作れ」
との任務を受けた Jean-Pierre と共に、Aziz は、見知らぬモロッコへ、『帰国』する羽目になってしまったのだが・・・
口がうまくて、物事を丸くおさめるためなら、嘘がすらすら口から出てくる Aziz と、生真面目で、不器用なため、人生に行き詰まりを感じている Jean-Pierre を中心に、展開するストーリーは、意外性に満ちており、予想もつかない方向へどんどん、読者を誘い込んでゆきます。 軽快な語り口には、ユーモアがたっぷり盛り込まれており、何度も声を出して笑ってしまいました。 そして、作品全体に漂う人間に向けられたやさしい視線がとても心地いい、とっても不思議な魅力を持つ小説です。
本を閉じた後でも、作中人物の気持ちが、いつまでも心に引っかかったままで、消える事なく、作品の一場面が、時折ふと、まるで自分が体験した事のように、頭の中に蘇り、心をきゅんとさせてしまいます。 そんな、読み終わった後、後を引く小説。
今まで、読んだ Didier Van Cauwelaert 氏の作品で、私が、一番好きな作品です。
出来るだけ予備知識なしで、この作品を発見してもらいたい、そんな作品なので、詳しいことは書きませんが、小説好きの方なら、読んでみて、絶対損をしない、そう断言できる作品だと思います。
この作品は、1994年に初版出版され、その年のゴンクール賞を受賞しています。
現在では、考えも及びつかないことですが、フランスの世論が、不法滞在者を強制送還するのに、ためらいを感じていた、そんな20年前のフランスの社会背景もおぼろながらに、伝わって来て、複雑な思いを感じずにはいられませんでした。
【こんな人にお勧め】
繊細さとユーモアが感じられる小説を読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
【関連記事】
【外部リンク】
2010年7月6日に一部加筆修正。2013年4月1日にレイアウト修正。
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