
著者 : Stéphane Héaume
出版社 : Seuil
本の種類 : ソフトカバー(14x2x21)
ページ数 : 291頁
写真家の Julia Schlick は、ネパールでの撮影旅行からの帰宅後、ジャーナリストの夫 Clifton Cliff が失踪しているのを知る。 ありとあらゆる手をつくして、Clifton の行方を捜したが、彼女は、彼の失踪の手がかりをつかむ事すら出来なかった。
そして、ある日、森を散策中に Julia は、何者かに誘拐されてしまう。
目を覚ました Julia は、自分がフランスから遠い、ニジェールの Pan'Jah にある瀟洒な屋敷で目を覚ます。 そこで、Julia は、Cercle Iago という国際児童保護機関に属する弁護士 Paul Lamartre だと名乗る初老の男の指示により自分が誘拐され、ここまで連れ来られた事を知る。
Paul Lamartre は、村を襲い、子供たちを誘拐し、売り飛ばすという蛮行を繰り返している Zeynab-Réne という女性に指揮された女性のみで構成された私兵軍隊と、Julia の夫 Clifton は、行動を共にしていると、打ち明ける。
Cercle Iago の賛同者であった Clifton が、どうして、この様な蛮行を続ける Zeynab-Réne の元にいるのか理解出来ない Paul Lamartre は、Clifton を捕らえ、彼にその真実を正したいと願っていたのだった。
ところが、Clifton は、Zeynab-Réne の軍隊と共に、砂漠の真ん中に聳え立つ難攻不落の Fort-Haggar という要塞に立てこもっており Fort-Haggar に近づく事は不可能に思われた。
Clifton が唯一心を許している Julia なら、Fort-Haggar に近づく事が出来ると踏んだ Paul Lamartre は、彼が用意した護衛隊と共に、Fort-Haggar へ行く気はないかと、Julia に打診する。
強い印象を受けた「Le fou de Printzberg」の著者、Stéphane Héaume 氏の新作。
本作は、今までの Stéphane Héaume 氏の作風とは、異なり、冒険的な要素が高くなっています。
砂漠に聳え立つ要塞 Fort-Haggar のイメージはとても美しく、なかなか魅力的な舞台設定。 実際に存在するのならどんな姿をしているのか知りたかったので、ネットで調べたのですが、Fort-Haggar も、Pan'Jah も、見つける事が出来ませんでした。
さて、作品についてですが、プロットそのものは、悪くないのですが、作品の構成の仕方が粗いので、あちらこちらにアラが見られ、それが、私には気になって仕方がありませんでした。
又、今まで読んだ Stéphane Héaume 氏の作品の魅力は、風景や、状況を描写しながら、作品のムードを盛り上げてゆく、その手法にあったのですが、本作では、人物描写にポイントが置かれているため、それがあまり発揮されていないようにも思えました。 又、ヒロインの脇を固める作中人物のキャラクター設定は面白いのだけど、その魅力が充分に引き出されていないように、感じました。
この設定で、Stéphane Héaume 氏の文章力だったら、もっと美味な作品が書けたはずなので、残念!
と、いうのが、本を閉じた後抱いた最初の感想。
期待が大きかったので、おのずから、シビアな評価をしてしまいましたが、いくつかの瑕瑾はあるものの、相対的に見るとまずまずの出来の作品だと思います。
それにしても、いつになったら Stéphane Héaume 氏の手になる「Le fou de Printzberg」を凌ぐ作品を読む事が出来るのでしょうか?
【こんな人にお勧め】
砂漠に聳え立つ要塞を舞台にした小説を読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 2.5/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 3/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 3/5(難<易)
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2010年7月14日に一部加筆修正。 2013年4月19日にレイアウト修正。
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