フランス語の本の読書記録 : Archives [ 2009年05月26日 ]

フランス語の小説、漫画、エッセイ等の読書の記録

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砂漠にそびえる要塞に籠る夫に逢いうため旅に出たフランス人女性の冒険を描いた小説

22:58

表紙写真nuit de Fort-Haggar「La nuit de Fort-Haggar」

著者 : Stéphane Héaume
分類 : 冒険小説、多読

出版社  : Seuil
本の種類 : ソフトカバー(14x2x21)
ページ数 : 291頁


写真家の Julia Schlick は、ネパールでの撮影旅行からの帰宅後、ジャーナリストの夫 Clifton Cliff が失踪しているのを知る。 ありとあらゆる手をつくして、Clifton の行方を捜したが、彼女は、彼の失踪の手がかりをつかむ事すら出来なかった。

そして、ある日、森を散策中に Julia は、何者かに誘拐されてしまう。
目を覚ました Julia は、自分がフランスから遠い、ニジェールの Pan'Jah にある瀟洒な屋敷で目を覚ます。 そこで、Julia は、Cercle Iago という国際児童保護機関に属する弁護士 Paul Lamartre だと名乗る初老の男の指示により自分が誘拐され、ここまで連れ来られた事を知る。

Paul Lamartre は、村を襲い、子供たちを誘拐し、売り飛ばすという蛮行を繰り返している Zeynab-Réne という女性に指揮された女性のみで構成された私兵軍隊と、Julia の夫 Clifton は、行動を共にしていると、打ち明ける。
Cercle Iago の賛同者であった Clifton が、どうして、この様な蛮行を続ける Zeynab-Réne の元にいるのか理解出来ない Paul Lamartre は、Clifton を捕らえ、彼にその真実を正したいと願っていたのだった。

ところが、Clifton は、Zeynab-Réne の軍隊と共に、砂漠の真ん中に聳え立つ難攻不落の Fort-Haggar という要塞に立てこもっており Fort-Haggar に近づく事は不可能に思われた。
Clifton が唯一心を許している Julia なら、Fort-Haggar に近づく事が出来ると踏んだ Paul Lamartre は、彼が用意した護衛隊と共に、Fort-Haggar へ行く気はないかと、Julia に打診する。 

強い印象を受けた「Le fou de Printzberg」の著者、Stéphane Héaume 氏の新作。
本作は、今までの Stéphane Héaume 氏の作風とは、異なり、冒険的な要素が高くなっています。

砂漠に聳え立つ要塞 Fort-Haggar のイメージはとても美しく、なかなか魅力的な舞台設定。  実際に存在するのならどんな姿をしているのか知りたかったので、ネットで調べたのですが、Fort-Haggar も、Pan'Jah も、見つける事が出来ませんでした。 

さて、作品についてですが、プロットそのものは、悪くないのですが、作品の構成の仕方が粗いので、あちらこちらにアラが見られ、それが、私には気になって仕方がありませんでした。

又、今まで読んだ Stéphane Héaume 氏の作品の魅力は、風景や、状況を描写しながら、作品のムードを盛り上げてゆく、その手法にあったのですが、本作では、人物描写にポイントが置かれているため、それがあまり発揮されていないようにも思えました。 又、ヒロインの脇を固める作中人物のキャラクター設定は面白いのだけど、その魅力が充分に引き出されていないように、感じました。

この設定で、Stéphane Héaume 氏の文章力だったら、もっと美味な作品が書けたはずなので、残念!
と、いうのが、本を閉じた後抱いた最初の感想。

期待が大きかったので、おのずから、シビアな評価をしてしまいましたが、いくつかの瑕瑾はあるものの、相対的に見るとまずまずの出来の作品だと思います。

それにしても、いつになったら Stéphane Héaume 氏の手になる「Le fou de Printzberg」を凌ぐ作品を読む事が出来るのでしょうか?

【こんな人にお勧め】
砂漠に聳え立つ要塞を舞台にした小説を読みたい方。

【きわめて個人的な本の評価】
作品評価     : 2.5/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち    : 3/5(難<易)

【関連記事】
著者名別索引・小説 【著者名 H・I】Stéphane Héaume

2010年7月14日に一部加筆修正。 2013年4月19日にレイアウト修正。

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