
著者 : Pierre Bordage
出版社 : Au Diable Vauvert
本の種類 : ソフトカバー(13x3x20)
ページ数 : 493頁
地球に大異変が起こる事を確信した Franx こと、Franc-Xavier は、フランスのペリゴー地方に、自給自足が可能な設備と食品を備えたコミューンを作った。 Franx に賛同した数家族がこのコミューンに参加したが、隔離されたコミューン内での人間関係のいざこざに耐えかね、彼らは次々とコミューンを去り、残ったのは、Franx と彼の妻 Alice と、二人の子供と、身長2メートルの大男 Jim だけになった。
亡くなった伯母の遺産のパリのアパートを売却するため、家族をペリグーへ残し、Franx は、パリに向かうが、運悪く、Franx がパリに居る時に、地球に大異変が起こる。 大地震が起こり、火山噴火が起こり、橋や建物が崩れ落ち、
空は厚い雲で覆われ、灰が降り始め、停電になり、電車、飛行機はストップし、パソコン、電話は使用不可能になってしまう。
その地獄のような中、家族の元へ帰ろうと、500キロの道のりを、酷寒の中、徒歩で進む Franx の様子と、一時の心の迷いから身を許してしまった、粗野で乱暴で、エゴイストな暴君の Jim から、家族を守ろうとする Alice と、子供達の姿を並行して語ったサバイバル小説。
本書は、SF小説に分類されるタイプの作品だけど、本書のテーマとなる大異変がどうして起こったのか、どうして、灰が降り始めて、永遠の夜が訪れたのか、どうして、一握りの人間のみが生き残ったのか・・・等々、全く説明がなされないまま、ストーリーは進行してゆきます。
瀕死の母親から託された、不思議な能力を持つ自閉症の少女を連れ、極寒の中、家族の元へ向かう主人公の姿を、彼が道々出会う、生き延びようともがく人々の姿とからめて語った、Franx が主人公の章と、エゴイストで暴力的で、思慮の浅い男から、自分達と限りある蓄えを守ろうと奮闘する Franx の家族達を描いた章が交互に書かれてゆきます。
灰の降りしきるマイナス20度の気温の中、家族の元へ向かう、困難に満ちた冒険小説そのものの Franx の道中、徹底した悪者に描かれている害虫そのものの大男 Jim と、Alice 達の心理戦の描写には、著者のエンタメ小説のテクニシャンとしての筆致を十分に堪能する事が出来ます。
しかし、読み進めてゆくうちに、
火山のそばの町だけなく、どうしてフランス全土に灰が降り続いているの?
灰から目を守るために水泳ゴーグルをつけたけれど、どうしてマスクはしないの?
マスクなして灰を吸い続けているのに、呼吸困難に陥らないのはどうして?
人や、ねずみや、犬が生き残ったのに、どうして猫が出てこないの?
灰がかかった氷を溶かした水を飲んでも平気なのはどうして?
などなど、疑問が続出。 おまけに、同じような事の繰り返しが、延々と490頁続くので、うんざりしてしまいました。
Pierre Bordage 氏の事だから、ラストに何か大きな驚きがあるに違いない!
と、確信して、我慢してラストまで読み続けてたのですが、その苦労は報われる事はありませんでした。
今まで読んだ Pierre Bordage 氏の小説に見られた、ピンと筋の通った正義感や主張も、斬新さも見られず、心動かされる所すら皆無の、3流テレビドラマ的な娯楽小説。 サバイバル小説が好きな人には、いいかもしれませんが、私は、この忙しい時に、貴重な時間を無駄にしてしまった! と、後悔の念にかられました。
Pierre Bordage 氏の次回作に期待したいと思います。
【こんな人にお勧め】
迫力のあるSF・サバイバル小説を読みたい方。 多読用
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 2/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
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2010年5月18日に一部加筆修正。 2013年4月23日にレイアウト修正。
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