♥ Coup de coeur ♥
「Le cas Sneijder」
著者 : Jean-Paul Dubois
出版社 : Editions de l'Olivier
本の種類: ソフトカバー(14x1x21)
ページ数: 219頁
カナダのモントリオールを舞台に、エレベーター事故で九死に一生を得た60歳になる Paul Sneijder の事故後の奇妙な人生を語った小説。
凝った構成の小説ではないけれど、あらすじを知ってから読むと、100%堪能することが出来ないタイプの本。 裏表紙に書かれている本の紹介文の中には、これ書いちゃったら、お楽しみが無くなってしまうのに・・・と、言いたいようなものもあるが、本書の場合、そんな点を踏まえた上、この小説のポイントをしっかり掴んで書かれいる、なかなか秀逸な紹介文である。 だから、本書について知りたい方は、ネットのレビューを読む前に、Editions de l'Olivier 社のサイト(http://www.editionsdelolivier.fr/)の本書の紹介を読む事をお勧めする。
奇跡的にエレベーター事故から助かり、今まで自分を誤魔化し続けて来た欺瞞に気づき、周囲の思惑を慮る事なく、心のままに、振る舞い始めた Paul。 自分に素直に生きようとすればするほど、世間体に固執する彼の妻との間の溝は深まるが、Paul は、彼女の思いなど歯牙にもかけやしない。 そんな Paul の心理が、事故後に彼が出会った人々との交流に絡め、冷めたユーモア漂う、軽やかな文章で綴られてゆく。 そして、しがらみから自由になった Paul の姿を追いかけているうちに、話は終着駅に到着し、それを悟った時には、胸に楔を打ち込まれたような感覚を覚えた。 そして、その時、胸に広がった、感動とは対極的な場所に位置する感情の余韻は、本を閉じた後でも、消える事はなかった。
主人公の複雑な心理に、読者を同化させてしまう表現力もさる事ながら、主人公の目を通してしか描写されていないのに、彼の視点を越えて、心に伝わってくる彼の妻を初めとした作中人物達の心理描写の巧みさにも、圧倒された。
ネットの本書のレビューでは、しばしば、ブラックユーモアという言葉が使われているが、ブラックユーモアという形容詞では、括ることの出来ない、複雑な味のする小説。
読書の楽しみを削ぐなうこと無く、多くを語る事はできない本書は、今まで読んだ Jean-Paul Dubois 氏の小説の中で、私に最も強い印象を残した作品だった。
【こんな人にお勧め】
【きわめて個人的な本の評価】
【関連記事】
【外部リンク】
2013年2月9日に【外部リンク】追加。2013年3月21日にレイアウト修正。
「Le cas Sneijder」
著者 : Jean-Paul Dubois
出版社 : Editions de l'Olivier
本の種類: ソフトカバー(14x1x21)
ページ数: 219頁
カナダのモントリオールを舞台に、エレベーター事故で九死に一生を得た60歳になる Paul Sneijder の事故後の奇妙な人生を語った小説。
凝った構成の小説ではないけれど、あらすじを知ってから読むと、100%堪能することが出来ないタイプの本。 裏表紙に書かれている本の紹介文の中には、これ書いちゃったら、お楽しみが無くなってしまうのに・・・と、言いたいようなものもあるが、本書の場合、そんな点を踏まえた上、この小説のポイントをしっかり掴んで書かれいる、なかなか秀逸な紹介文である。 だから、本書について知りたい方は、ネットのレビューを読む前に、Editions de l'Olivier 社のサイト(http://www.editionsdelolivier.fr/)の本書の紹介を読む事をお勧めする。
奇跡的にエレベーター事故から助かり、今まで自分を誤魔化し続けて来た欺瞞に気づき、周囲の思惑を慮る事なく、心のままに、振る舞い始めた Paul。 自分に素直に生きようとすればするほど、世間体に固執する彼の妻との間の溝は深まるが、Paul は、彼女の思いなど歯牙にもかけやしない。 そんな Paul の心理が、事故後に彼が出会った人々との交流に絡め、冷めたユーモア漂う、軽やかな文章で綴られてゆく。 そして、しがらみから自由になった Paul の姿を追いかけているうちに、話は終着駅に到着し、それを悟った時には、胸に楔を打ち込まれたような感覚を覚えた。 そして、その時、胸に広がった、感動とは対極的な場所に位置する感情の余韻は、本を閉じた後でも、消える事はなかった。
主人公の複雑な心理に、読者を同化させてしまう表現力もさる事ながら、主人公の目を通してしか描写されていないのに、彼の視点を越えて、心に伝わってくる彼の妻を初めとした作中人物達の心理描写の巧みさにも、圧倒された。
ネットの本書のレビューでは、しばしば、ブラックユーモアという言葉が使われているが、ブラックユーモアという形容詞では、括ることの出来ない、複雑な味のする小説。
読書の楽しみを削ぐなうこと無く、多くを語る事はできない本書は、今まで読んだ Jean-Paul Dubois 氏の小説の中で、私に最も強い印象を残した作品だった。
【こんな人にお勧め】
巧みな心理描写の小説を読みたい方。 エレベーターをテーマにした小説を読みたい方。 多読用。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
【関連記事】
【外部リンク】
2013年2月9日に【外部リンク】追加。2013年3月21日にレイアウト修正。
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