フランス語の本の読書記録 : Archives [ 2012年08月 ]

フランス語の小説、漫画、エッセイ等の読書の記録

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00:17

ヴァカンスのため、9月中旬まで、ブログ更新おやすみします。(_ _)Zzz
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プチ・ニコラの挿画で有名なサンペ氏の風刺漫画集のペーパーバック版

18:34

表紙写真insondable mystere「Insondables mystères」

著者 : Jean-Jacques Sempé
分類 : ユーモア漫画、白黒漫画、短編漫画集、画集

出版社  : Folio
本の種類 : ペーパーバック
ページ数 : 52頁


「Petit Nicolas」シリーズの挿絵で有名な Jean-Jacques Sempé 氏の風刺漫画集「Insondables mystères」のペーパーバック版。

さらっと、描き流したように見えるのだけど、実はしっかりとした計算の元、省略されている、品のいい白黒のイラストに、思わずクスっと笑いがもれてしまうテキストが添えられた風刺漫画が、49点収録されている。

見開き二ページを占めるイラストに、短いテキストが添えられた一こま漫画や、テキスト無しの風刺画が大半を占めるが、中には、数頁に渡る10コマ以上のテキストなしの漫画や、かなり長いテキスト付きの1コマ漫画も、収録されている。 
教会で祈る婦人を題材にした漫画が幾つか収録されているが、同じタイプの漫画が続かないように、配慮し、編集されているので、一気読みしても、全く飽きることがなかった。

以前、このブログで紹介したサンペ氏の作品集「Sentiments distingués」と同様、、人間の心に生じる矛盾が、一枚、もしくは一連の絵の中に閉じ込められているのだが、風刺漫画に付き物の意地悪さが感じられない、ふわふわとした品の良さは、まさに、サンペ節。

ただ、ペーパーバック版に縮小されてしまっているので、お財布にはやさしいものの、大部分の絵が真ん中で断割されてしまっているのが、いとも残念。  やっぱりこの手の作品は、ペーパーバックでなくて、大判で読みたいものだと、痛感した。

【こんな人にお勧め】
画集風な一コマ漫画集を鑑賞したい方。  サンペ氏のファン。  品のいい風刺漫画を読みたい方。 

【きわめて個人的な本の評価】
総合評価     : 3.5/5
ストーリー    : 3.5/5
グラフィック   : 3/5
ストーリーボード : 5/5
フランス語難易度 : 1/5(易<難)
読みごこち    : 5/5(難<易)

【関連記事】
著者名別索引・BD 【著者名 S】Jean-Jacques Sempé

【外部リンク】
オリジナル版「Insondables mystères」のアマゾン・フランスの頁

2013年4月15日にレイアウト修正。

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スポーツを通して人間の営みを描いたフランスの短編小説集

15:44

♥ Coup de coeur ♥
表紙写真En labsence classement final「En l'absence de classement final」

著者 : Tristan Garcia
分類 : 短編集、多読、お勧め本

出版社 : Gallimard
本の種類: ソフトカバー(14x2x21)
ページ数: 203頁



30編のスポーツに関する、2~17頁の短編小説が収録されている作品集。  
走幅跳、卓球、バレーボール、サッカー、体操、水泳、F1、馬術、自転車レース、ゴルフ、オーストラリアの球技マーングルック(Marn Grook) など、本書で取り上げられているスポーツは、多種多様で、舞台になっている国も、ヨーロッパ、アフリカ、南米、アジアと、幅広い。  

だが、どの短編も、スポーツが各作品の軸に据えられてはいるが、スポーツのテクニックや、競技そのものについての記述は、殆ど見られない。  そんな本書は、純粋なスポーツ小説ではない、スポーツを通し、人の営みを描いた短編小説を集めた、異色なスポーツ小説集である。

スポーツ選手や、その家族、コーチやファンなど、スポーツに深い関わりあいのある人物の、人生の破片を切り取ることで、著者は、スポーツを通し、現代社会のある一面を、映し出して見せる。

ある国のある時代の、あるスポーツに係わる一つの出来事、そんな幾つもの出来事が、バラバラに語られてゆくのだが、最後まで読み終わると、スポーツというのは、決して、スポーツマンシップという言葉に代表されるような純粋な物ではなく、地球上の多様な人間の営みの集約だという事に気づかさせられる。

競技中の、ある一瞬を軸に展開する作品、政治等外部からのスポーツへの介入を扱った作品、ドーピング、選手の回りの人々の思惑、ファン心理を描いた作品等など、収録されている短編は、ヴァラエティーに富んでいる。  そんな、バランスの取れた短編集なので、一気読みしても、全く飽きることがなかった。

どの作品も、それなりの味わいがあるのだが、私のお気に入りは、オーストラリアのマーングルックを題材にした「Marn Grook」。  その他、自転車レースを題材にした「Cycles」、ブリュッセルの中国系卓球選手を主人公にした「Prunelles brillantes de dents nacrées」等も、興味深く読んだ。

中には、10頁以上の長さの短編もあるが、大部分の作品は、2頁~4頁と、とても短く、読み易いフランス語で書かれているので、多読や、就寝前の読書にピッタリの一冊である。

・目次

Extension
Le saut de Malmö
Prunelles brillantes de dents nacrées
3000 mètres steeple martyre
Monde amateur
Qu'est-ce qu'un K.O.?
Cycles
Lof pour lof
Maigre
Complexe d'infériorité numérique
L'ombre pour la proie
Hermine et moi
La libéro de Cuba
Clubs de fer et clubs de bois
A leur mêlée
Marn Grook
En transit pour l'exode
Combiné
En pyramide
Falta
"Ame japonaise, technique occidentale"
La carte de l'Afrique
Pour une critique matérialiste du sport
Les sensations
Courant de court-circuit
Supporte
A force de lutter
Les capacités
"Toute l'Histoire humaine s'avance vers un seul et unique but"
Dans le dos

【こんな人にお勧め】
スポーツを通し人間の営み描いた短編小説を読みたい方。 多読用。

【きわめて個人的な本の評価】
作品評価     : 4/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち    : 4/5(難<易)

【関連記事】
著者名別索引・小説 【著者名 G】Tristan Garcia

2013年5月30日にレイアウト修正。

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連続猟奇殺人事件の真相を追う独身女性予審裁判官の姿を描いたホラー・サスペンス

01:44

表紙写真foret des manes「La forêt des Mânes」

著者 : Jean-Christophe Grangé
分類 : サスペンス小説、多読

出版社  : ALBIN MICHEL
本の種類 : ソフトカバー(16x4x24)
ページ数 : 506頁


パリ、ナンテールの大審裁判所で、予審裁判官を務める Jeanne Korowa は、同僚の裁判官 François Taine が担当していた猟奇連続殺人事件に興味を抱く。 François に請われ、捜査を手伝っているうちに、Jeanne は、自分が、偶然に、不正な方法で入手した、精神科医の診察の録音の中に、事件の手掛かりがある事に気づく。 そして、独自に、この事件を捜査して行くうちに、事件の真相が、ニカラグアにある事を確信した、Jeanne は、たった一人で、ニカラグアへと向う。

パリで起こった連続猟奇殺人事件の真相を追う、恋に飢える一人のシングル・キュリア・ウーマンの姿を描いた、ホラー・サスペンス。

ジャン=クリストフ・グランジェ氏の作品は、どれも、かなりどぎついグロテスクな描写に事欠かないのだが、パリ、ニカラグア、グアテマラ、アルゼンチン、そして、未開の南米のジャングルを舞台に展開する本書もその例に漏れない。 
それにもかかわらず、残酷描写が、とても苦手な私が、本書を最後まで読み切る事が出来たのは、ことに、流れるような読み心地の文体と、構成力のおかげである。  

スピード感のある文章や、頁を追うに連れ、新たな真実が明らかになる、読者の関心を逸らさない構成もさる事ながら、人間の遺伝子や、考古学的な興味深い考察が、ストーリーに、織り込まれているのにも興味を引かれた。 

ただ、ラストは、ホラー映画さながらで、迫力たっぷりなのだが、あまりにも現実離れし過ぎているため、興ざめさせられた。

しかしながら、流れる様な読み心地の、スピード感溢れるサスペンス小説なので、B級ホラー映画のファン、サスペンスにリアリティーを求めない方、グロ度の強い描写が気にならない方の、日光浴のお供に、又は、多読用にお勧めできる一冊なのではないかと思った。

【こんな人にお勧め】
読み易いホラー・サスペンス小説をお探しの方。   B級ホラー映画のファン。 多読用。

【きわめて個人的な本の評価】
作品評価     : 3/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち    : 4/5(難<易)

【関連記事】
著者名別索引・小説 【著者名 G】Jean-Christophe Grangé

【外部リンク】
  • 著者による本書の紹介ヴィデオ
  • ペーパーバック版「La forêt des Mânes」のアマゾン・フランスの頁

2013年4月15日にレイアウト修正。

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インスピレーションの欠乏に悩む中年の作家と一本気の若い女の子の出会いを描いた一口変わったストーリーのバンド・デシネ

04:43

表紙写真Cadavre exquisBD「Cadavre exquis」

著者 : Pénélope Bagieu
分類 : パリが舞台

出版社  : Gallimard
本の種類 : ハードカバー(24x1x32)
ページ数 : 124頁


【概要】
インスピレーションの欠乏に悩む中年の作家と、一本気の若い女の子を巡る、軽快なタッチで描かれたフランス漫画。
ブログがきっかけで、BD作家としてデビューした、Pénélope Bagieu 氏の初めての長編BD。

【ストーリー】
見本市や展示会で、イベントコンパニオンをしている Zoé は、仕事はつまらないし、同棲中の、失業中でデリカシーのないボーイフレンドにも、うんざりで、毎日が不満でならない。  ある日、 Zoé は、トイレを拝借した事から、 引きこもりの中年物書きの Thomas Rocher と、知り合いなるのだが・・・

【グラフィック・彩色】
細部を省略し、センスよく崩されている、シンプルなペンタッチのグラフィック。  

【ストーリーボード(ネーム)】
長めの台詞も、ちらほら見られるが、概してリズミカル。

【読み心地】
快適。

【読後感】
読み始めた時は、中年作家と、軽いノリのバイタリティー溢れる若い女の子の恋愛漫画かと思ったのだが、最後まで読んで、絵柄とは似てもつかない、ストーリーの意外な展開に驚かされた。

読後感が微妙なためが、ネットでの評価は、二分されている様である。 しかし、少々、リアリティーに欠けているきらいがあるものの、凡庸な恋愛漫画に終わらない、ひねりが入ったストーリーは、私は、中々面白いと思った。

【こんな人にお勧め】
ひねりの入ったストーリーの漫画を読みたい方。 フランスの新進漫画家の作品を読みたい方。

【きわめて個人的な本の評価】
総合評価     : 3.5/5
ストーリー    : 4/5
グラフィック   : 3.5/5
カラーリング   : 3/5
ストーリーボード : 3.5/5
フランス語難易度 : 2/5(易<難)
読みごこち    : 4/5(難<易)

【関連記事】
著者名別索引・BD 【著者名 B】Pénélope Bagieu

【外部リンク】
  • Pénélope Bagieu 公式サイト(仏語)
  • Pénélope Bagieu 日本語版ブログ
  • 本書の一部が読めるアマゾン・フランスの「Cadavre exquis」の頁
  • ペーパーバック版「Cadavre exquis」のアマゾン・フランスの頁

2013年4月17日にレイアウト修正。

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ジャンル : 本・雑誌
テーマ : フランス漫画(BD)
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中世フランスで地中海沿岸諸国との通商で富を築いた大商人ジャック・クールの生涯を描いた歴史小説

06:39

表紙写真gd coeur「Le grand Coeur」

著者 : Jean-Christophe Rufin
分類 : 歴史小説

出版社  : Gallimard
本の種類 : ソフトカバー(14x3x21)
ページ数 : 497頁


中世フランスで、イタリア、ビザンティンを初めとした地中海沿岸諸国との通商で富を築き、シャルル7世の会計方を務めた、大商人、ジャック・クールの生涯を、彼の回想録という形で語った小説。

1997年に「L'Abyssin」でゴンクール処女作賞を、2001年に「Rouge Brésil」で、ゴンクール賞を受賞した、アカデミー・フランセーズの会員の作家であり、MSFを初めとした、国際医療援助団体で活躍した医師であり、2007~2010年、セネガル大使を務めた事もある、ジャン=クリストフ・リュファン氏の最新作である本書は「Rouge Brésil」発表以来、歴史小説とは、遠ざかっていた著者が、久しぶりに手がけた歴史小説である。
本書の巻末のあとがきには、今まで、書き尽くされている商人としてのジャック・クールではない、人間としてのジャック・クールを書きたく、著者は、本書を記したという様な事が書かれている。

そのためか、ジャック・クールの王シャルル7世や、彼の愛人達に関する気持ちにばかりに、筆が割かれており、本書には、商人としてのジャック・クールについての描写は、殆ど見られない。
フランスで、初めて北アフリカ諸国と広く交易をし、フランスから地中海沿岸の国々を網羅する、広い交易網を構築した、大商人の生涯を描いた小説なのにもかかわらず、商売を興した時の苦労や工夫、巨大な交易網を築いたその過程や、商売相手との取引や、諸外国との交易に関する描写も、皆無に等しい。 

ジャック・クールは、ブルージュの毛皮職人の家に生まれ、その才覚と嗅覚で、大商人にのし上がり、巨大な富を築き、シャルル7世の戦争資金の調達に尽力し、さらに勢力を拡げていった、やり手の商人であった。  しかし、宮廷の駆け引きに負け、ライヴァル達の陰謀に嵌り、告訴され、裁判を受け、財産没収の上で禁固刑を受けたが、側近の計らいにより、脱走に成功し、ギリシャのキスカ島で人生を終えた。 
そんな、波瀾万丈の人生とは、まさにこの事と、言いたくなるような人生を送った人物を題材にしているのだから、さぞや血のたぎる作品になるでは、と、思い、本書を手に取ったのだが、そんな期待とは、裏腹な、人生を諦観した男が、自らの人生の節々となる場面の想いを静かに語るという、極めて冷静な口調で、本書は語られてゆく。

ジャック・クールについて、知識のある方が本書を読んだのなら、全く別の印象を受けることと思うが、これまでに、ジャック・クールについて書かれた本を読んだことのない私には、ジャック・クールの人生の、最も面白い所が、端折られてしまったように感じられ、物足りない想いを抱え、本を閉じた。

しかし、この興味深い人物について、興味を掻き立てられ、(悪徳?)商人としてのジャック・クールについて書かれた作品を読まずにはいられない気分になったので、不当な汚名を着せられたジャック・クールの真の姿を、大衆に知らしめるために、本書を記したという、著者の狙いは、確かに果たされた様である。

【こんな人にお勧め】
中世フランスの興味のある方。 中世フランスの大商人ジャック・クールに興味のある方。

【きわめて個人的な本の評価】
作品評価     : 3/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち    : 3/5(難<易)

【関連記事】
著者名別索引・小説 【著者名 R】Jean-Christophe Rufin

2013年4月15日にレイアウト修正。

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テーマ : フランス語の本
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植民地下のニューカレドニアでの反乱リーダーの骸骨を探しに、フランスへやって来た老人の姿を描いたディディエ・デナンクス氏の小説の漫画化

19:01

表紙写真retour atai「Le retour d'Ataï」

ストーリー : Didier Daeninckx
作画・彩色 : Emmanuel Reuzé
分類 : 社会派漫画

出版社  : Emmanuel Proust
本の種類 : ハードカバー(24x1x31)
ページ数 : 48頁


【概要】
フランスの植民地下のニューカレドニアで起こった、現地人の反乱のリーダーであった Ataï の髑髏を、フランスに探しに来た一人の老人の姿を通し、植民地下のニューカレドニア、及び、1931年の国際博覧会でのフランス人の罪を問うた、フランスの人気推理作家 Daeninckx 氏の小説「Le retour d'Ataï」の、漫画化。

【ストーリー】
ある思いを胸に、年老いた Gocéné は、住み慣れた Kanaky を後にし、パリへ向う。 彼の目的は、パリの有名美術オークションへ、美術品として、出品された髑髏を、その目で確認する事であった。

【グラフィック】
抑えた色調で、彩られた、なかなか達者なグラフィック。
作中人物の内面が表現されているコマの背景は、簡素に、場面説明が必要なコマの背景は、綿密に描かれているという、コントラスの効いた、構図が用いられている。

【ストーリーボード】
リズミカル。

【読み心地】
快適。

【読後感】
フランス人が、植民地で犯した罪をテーマにした、Didier Daeninckx 氏の「Le retour d Ataï」の漫画化。  読み応えのあるストーリーは、言わずもがな、グラフィック、彩色共に好感が持てる、滑らかな読み心地の作品だった。  

Didier Daeninckx 氏が巻末に寄せた、あとがきには、原作の小説出版後の逸話が書かれているが、それを読んだ時には、
「フィクションが、現実を変えてゆくというは、こういう事ではないか!」
と、目頭が熱くなるのを感じた。

【きわめて個人的な本の評価】
総合評価     : 4/5
ストーリー    : 4/5
グラフィック   : 4/5
カラーリング   : 5/5
ストーリーボード : 4/5
フランス語難易度 : 2/5(易<難)
読みごこち    : 4.5/5(難<易)

【関連記事】
著者名別索引・小説 【著者名 D】Didier Daeninckx

【外部リンク】
本書の原作小説「Le retour d Ataï」の Verdier 社の紹介ページ

2013年4月28日にレイアウト修正。

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ゴールドラッシュのアラスカを舞台にしたジュニア向けサスペンス小説

18:21

♥ Coup de coeur ♥
表紙写真revolver「Revolver」 
(原題 : Revolver)

著者 : Marcus Sedgwick
分類 : サスペンス小説、児童書、ジュニア向け小説、お勧め本、多読、仏訳本

翻訳   : Valérie Dayre
出版社  : Thierry Margnier
本の種類 : ソフトカバー(12x1x21)
ページ数 : 204頁


1910年、北緯68度に位置するスゥエーデンの Giron の村外れの小屋に父親と、継母と姉と3人で住んでいる Sig は、帰宅しない父親の、様子を見に行くが、凍りついた湖畔で、彼が目にしたのは、息のない父親の姿だった。 父親は、薄氷を踏み、湖に転落し、何とか自力で這い上がったものの、そこで息つきた様だった。 

Sig は、急いで家へ戻り、若い継母と姉と共に、父親の体を家へ運びこむ。  継母と姉は、助けを呼びに行くために、犬ソリで、村に向う。  
ところが、父親の死体と一緒に、たった一人で家に残された Sig の元に、父親のかつての知り合いである Gunther Wollff と名乗る、粗雑な大男が、やって来る。


1910年のスゥエーデンを舞台に、たった一人で、父親が、過去に『隠匿した、自分の分前』を、取り戻しに来た、ならず者と、対決する羽目になった少年の姿を描いた、サスペンス小説。

ジャック・ロンドンの小説を彷彿させる、アラスカのゴールドラッシュ時代を舞台に、絶体絶命のピンチに追い詰められた少年の心理が、緊張感たっぷりに描かれてゆく。

結末は、なんとなく予想できてしまったにもかかわらず、ストーリーが佳境にさしかかる辺りでは、頁をめくるのすら、もどかしく感じられる程、話に取り込まれてしまった。

« Même les morts racontent des histoires. »
(死人だって、ものを言うものだ)

«Dans la vie, il y a toujours un troisième choix possible. Même si tu te sens coincé dans un dilemme inextricable, il existe toujours une troisième voie. Tu dois seulement la chercher. »
(人生には、必ず3つ目の選択肢がある、 入り組んだジレンマの板挟みになっていたとしても、3つめの選択肢が、きっと存在する。 それを探すべきなんだ)


等という、含蓄のある言葉が、効果的に織り込まれているのも、作品の魅力を倍増させている。

図書館では、ジュニア向けの小説に分類されていたが、子供だけに読ませておくには、勿体無い、一般的なサスペンス小説と読んでも、全く遜色のない一冊だった。

【こんな人にお勧め】
ジャック・ロンドンの小説が好きな方。 子供が主人公のサスペンス小説を読みたい方。 多読用。

【きわめて個人的な本の評価】
作品評価     : 4/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち    : 4/5(難<易)

2013年3月21日にレイアウト修正。

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ある日突然記憶喪失になってしまった女性の姿を描いたバンド・デシネ

16:36

表紙写真page blanche「La Page blanche」

ストーリー : Boulet
作画・彩色 : Pénélope Bagieu
分類 : パリが舞台

出版社  : DELCOURT
本の種類 : ハードカバー(20x2x26)
ページ数 : 203頁


【概要】
ある日突然、自分の過去や自分に関する記憶を失ってしまった、一人の女性の姿を、ユーモアを交え描いたバンド・デシネ。

【ストーリー】
夕暮れのベンチで、突然、我に返ったヒロインは、自分がここで何をしていたのか、自分が何者であるのか、全くわからない事に気づく。  傍らにあったバッグの中に入っていた身分証明書の写真を見たところ、自分は、Eloïse Pinson という名前で、パリの10区のナンシー通りに住んでいるらしい。  バックに入っていたパリの地図を頼りに、身分証明書に書かれている住所に、『帰宅』しようとするのだが、彼女は、自分の住んでいるらしい街並みに、全く見覚えがない。
アパートの入り口のセキュリティー・コードも全く記憶にないが、外出する人の後から、何とか中に入ることが出来た彼女が、入り口で戸惑っていると、隣人らしき男が、彼女に話しかける。  彼の話から、彼女が猫を飼っている事を知った彼女は、猫の鳴き声がする部屋のドアに鍵を差し込み、なんとか『自分』の部屋に入ったものの、彼女は、この部屋にも、まったく見覚えがなかった。

【グラフィック・彩色】
細部を省略し、センスよく崩した、シンプルなペンタッチのグラフィック。  作中人物の感情描写が巧みで、顔の描き方に、コミック調のアクが感じられない好感の持てる絵柄。  
グラジュエーションが一切ない、ベタ塗りで、シンプルに彩色されているが、センス良い色使いは、グラフィックの魅力を引き立てている。

【ストーリーボード】
間のとり方が、絶妙で、リズミカル。

【読後感】
自分に関する過去の記憶を喪失してしまった、一人の女性が、失われた記憶を取り戻そうと奮闘する様を、センスよく崩されたグラフィックで、ユーモアを交えながら、巧みに漫画化した、流れるような読み心地の作品。

ヒロインが、携帯電話のメッセージなどを元に、自分の過去を探してゆく様子を、描いたストーリーは、中盤までは、かなり楽しめたのだが、ラストが、いささか物足りないように、私には感じられた。

【こんな人にお勧め】
快適な読み心地のバンド・デシネをお探しの方。 パリジャンの日常を描いた漫画を読みたい方。

【きわめて個人的な本の評価】
総合評価     : 3.5/5
ストーリー    : 3/5
グラフィック   : 3.5/5
カラーリング   : 4/5
ストーリーボード : 4.5/5
フランス語難易度 : 1.5/5(易<難)
読みごこち    : 5/5(難<易)

【関連記事】
著者名別索引・BD 【著者名 B】Pénélope Bagieu

【外部リンク】
本書の一部も撮影されている著者の「La Page blanche」に関するインタビューの動画

2013年4月17日にレイアウト修正。

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サスペンスタッチのラブロマンス小説

16:06

表紙写真double identite「Double identité」

著者 : Didier Van Cauwelaert
分類 : サスペンス小説、恋愛小説、多読

出版社  : ALBIN MICHEL
本の種類 : ソフトカバー(14x2x21)
ページ数 : 249頁


任務中に、交通事故に遭い、記憶喪失となり、CIA から追われる身となった主人公は、CIAの手を逃れ、Maurice 諸島にあるホテルの管理人として、恋人の Muriel と、その二人の子供たちと、共に静かな日々を過ごしていた。  しかし、彼は、任務遂行のため、催眠術により、彼の脳に、人工的に植え付けられた、植物学者 Martin Harris の記憶から逃れることが出来ず、苦い想いを感じていた。

そこで、主人公は、Martin Harris として、生きる事に決め、Muriel と共にホテルを離れ、イギリスの貴族の庭師として働くことにする。  しかし、何者かに仕掛けられた爆弾により、彼の住まいが爆破され、そこにいた Muriel と、その愛人が命を落す。  

命からがら屋敷を抜けだした主人公は、 Martin Harris の未亡人に会いにゆく事にしたのだが・・・


アマゾン河流域の原住民の住居区間にのみ成育する、特殊な薬草の、国際企業による独占を軸に据えたサスペンスがかった恋愛小説。

本書は著者の代表作「Hors de moi」の後日談となっているとの事だが、私は、「Hors de moi」は、読んでいなかったのだが、本書を理解するのに、全く支障がなかった。

国際企業による、アマゾン河流域の原住民の住居区間にのみ成育する特殊な薬草の独占に対する警告、という社会的メッセージを、恋愛小説に盛り込む、という発想は、優れているのだが、諜報小説や、社会派小説的としては、中途半端なため、その手の小説が好きな私には、いささか物足りなく感じられた。

しかし、適度なサスペンスと、エキゾチズムを盛り込んだ、流れる読み心地の恋愛小説なので、その手の作品がお好きな方には、お勧め出来るかもしれない。

【こんな人にお勧め】
多読用。  気楽に読めるサスペンス・ラブロマンス小説をお探しの方。

【きわめて個人的な本の評価】
作品評価     : 2.5/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち    : 4/5(難<易)

【関連記事】
著者名別索引・小説 【著者名 V・W・X・Y・Z】Didier Van Cauwelaert

2013年4月29日にレイアウト修正。

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