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著者 : DOA, Serge Quadruppani, C.Férey 他
出版社 : Points
本の種類 : ペーパーバック
ページ数 : 179頁
フランスのリオン市で開催されるサスペンス小説フェスティバル『Le festival Quais du Polar』の10周年を記念し、Points 社から、2014年に出版された短編小説集。
『Le festival Quais du Polar』で、過去に『Prix des Lecteurs(読者賞)』を受賞した9人の作家の未刊のノワール小説が収録されており、各短編の初めに、著者の略歴が掲載されている。
2003年のイラクを舞台に、アメリカの特殊部隊の戦闘を描いた
DOA 著「La meute」
『Affaire Véronique Courjault』を彷彿させる
Franck Thilliez 著「Le clandestin」
2007年アメリカのオハイオ州のマンスフィールドで発覚した、数奇な事件にインスピレーションを得、書かれた
François Boulay 著「Un canard au sang 」
死者と対話する能力を持つ男を軸に展開する
Marcus Malte 著「Max Vegas」
家族と一緒にクリスマスをカリブ海クルーズで過ごす事にした作家が語り手の
Caryl Férey 著「L’échappée」
田舎の貧乏家庭から、立身出世し、国際企業の役員になった男の半生を描いた
Antoine Chainas 著「Une trajectoire」
権力者により雇われた男の目から見たアラブの春が描かれる
Serge Quadruppani 著「Le point de vue de la gazelle」
フランスの田舎町に洋裁店を開いた女性が主人公の
Antonin Varenne著「Dernière lumière」
147日間をモスクワ空港で過ごした後、亡命先のアイスランドへ行くため、FSBのエージェントにエスコートされ Teriberka へ向かう Snowden の姿をユーモラスに描いた
Olivier Truc 著「L’exfiltration de Snowdenski 」
以上の9篇の短編小説が収録されている。
フランスには、『Roman noir』と呼ばれている小説のジャンルがある。
日本人の中には、暴力や犯罪を書く事=ノワールだと、思っている人もいるようであるが、フランスで『Roman noir』に分類される小説の幅はもっと広い。
勿論、『Roman noir』の代表とされる『Série noir』と呼ばれるジャンルに属する小説は、犯罪や犯罪者をサスペンス調に描いたものが大半であるが、 サスペンスでなくとも、犯罪が作品の軸に据えられていなくとも『Roman noir』に分類される作品も存在する。
今まで多くの『Roman noir』と呼ばれる小説を読んで来た経験から言うと、大概にして、絶望の一つ(あるいは複数の)形を描いた小説が『Roman noir』と呼ばれる傾向にあるのではないかと、私は考えている。
と、まえがきが長くなってしまったが、本書には、そんなバラエティーに飛んだ『Roman noir』の9つの異なったタイプの短編小説が収録されている作品集。
グロテスクな描写がない戦闘を描いた作品でも『Roman noir』に成りうるという事を示した 「La meute」
どちらかというと、正統派(?)のノワールに分類されるのではないかと思われるが、それぞれ手法が異なった
「Le clandestin 」「Un canard au sang 」「Dernière lumière」
「Max Vegas 」 の様なファンタスティック的な要素を含むノワール
社会派小説的な要素もある 「Le point de vue de la gazelle」
それから、「これもNoirに分類されるの?」と、一部の日本の読者は驚かれるかもしれないが、「これこそが、ノワールの真髄」と、私は呼びたくなった 「Une trajectoire」
そして一見すると、ノワールではないようにも思えるけれど、良く考えると、「これ程意地悪なノワールはないのではないか!」と賛美したくなる、ブラックユーモアとノワールの融合が見事な 「L’échappée」や「L’exfiltration de Snowdenski 」
とにかく、ありとあらゆるタイプのロマン・ノワールが味わえるので、『Roman noir』というジャンルの懐の深さを実感するのに最適な一冊。
ノワール小説ファンの方に、お勧めしてい一冊である。
【こんな人にお勧め】
ロマン・ノワールのファン。 様々なタイプのノワールを一度に味わえる作品集を読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】作品評価 : 3.5/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
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♥ Coup de coeur ♥
「Daytripper, au jour le jour
」
著者: Gabriel Bás & Fábio Moon
出版社 : Urban Comics
本の種類 : ハードカバー(24x1x30)
ページ数 : 256頁
【概要】
【ストーリー】
【グラフィック・彩色】
【ストーリーボード(ネーム)】
【読み心地】
【読後感】
【こんな人のお勧め】
【きわめて個人的な本の評価】
【外部リンク】
*↑で言及した本書の抜粋(ネタバレ注意!)

著者: Gabriel Bás & Fábio Moon
出版社 : Urban Comics
本の種類 : ハードカバー(24x1x30)
ページ数 : 256頁
【概要】
Sao Paulo 在住の作家 Brás de Olivia Domingos を主人公とした10章の短編漫画によって構成されている、ブラジル人の双子の漫画家 Gabriel Bás 氏と Fábio Moon 氏の手による独創的な構成の長編漫画。
2011年に、アイズナー賞のベスト・リミテッド・シリーズ賞(The 2011 Eisner Award,Best Limited Series)、及び、
ハーヴェイ賞のベストシングルストーリー賞(Harvey Awards,Best Single Issue or Story)を受賞。
2013年アングレーム国際漫画フェスティヴァル公式セレクションノミネート作品。
2011年に、アイズナー賞のベスト・リミテッド・シリーズ賞(The 2011 Eisner Award,Best Limited Series)、及び、
ハーヴェイ賞のベストシングルストーリー賞(Harvey Awards,Best Single Issue or Story)を受賞。
2013年アングレーム国際漫画フェスティヴァル公式セレクションノミネート作品。
【ストーリー】
Sao Paulo 在住の作家 Bràs de Olivia Domingos の10通り人生の最後の瞬間が描かれてゆく。
【グラフィック・彩色】
淡い色調でセンシブルにカラーリングされている、非常に達者なグラフィック。 作中人物の感情表現が巧みな上、コマの構成、頁構成も秀逸。
【ストーリーボード(ネーム)】
ダイナミックで、リズミカル。
【読み心地】
テキスト部分が集中している頁もあるが、せりふの中の文章の構成の仕方が上手いので、快い読み心地を味わう事が出来た。
【読後感】
第9章の数行と、第10章の2行*
(とっても素敵な言葉なので、この記事のおしまいに、抜粋を記すが、ネタばれになってしまうので、本書を読みたいと思っている方は、この部分を読む前に、本書を読まれる事をお勧めする)
に集約される、生と死に関する観念を表現するために、10章254頁を費やした、大胆で独創的な漫画。
私は、ブラジル漫画を読むのは初めてだが、こんなにスゴイ漫画家がいたのかと、驚愕させられた、哲学的な考察をセンシブルに盛り込んだ漫画。 9章目、そして10章のラストでは、思わず目頭が熱くなってしまった。
(とっても素敵な言葉なので、この記事のおしまいに、抜粋を記すが、ネタばれになってしまうので、本書を読みたいと思っている方は、この部分を読む前に、本書を読まれる事をお勧めする)
に集約される、生と死に関する観念を表現するために、10章254頁を費やした、大胆で独創的な漫画。
私は、ブラジル漫画を読むのは初めてだが、こんなにスゴイ漫画家がいたのかと、驚愕させられた、哲学的な考察をセンシブルに盛り込んだ漫画。 9章目、そして10章のラストでは、思わず目頭が熱くなってしまった。
【こんな人のお勧め】
人生と死の意味という題材を詩的に、そしてセンシブルに表現した漫画を読みたい方。 ブラジルの優れた漫画家の作品を読んでみたいとお思いの方。
【きわめて個人的な本の評価】
総合評価 : 5/5
ストーリー : 5/5
グラフィック : 4.5/5
カラーリング : 5/5
ストーリーボード : 4/5
フランス語難易度 : 2/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
ストーリー : 5/5
グラフィック : 4.5/5
カラーリング : 5/5
ストーリーボード : 4/5
フランス語難易度 : 2/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
【外部リンク】
- Gabriel Bás & Fábio Moon 公式ブログ
- 本書の邦訳「デイトリッパー 」のアマゾンジャパンの頁
- 英語版「Daytripper」のアマゾン・ジャパンの頁
- 英語版「Daytripper」のアマゾン・フランスの頁
*↑で言及した本書の抜粋(ネタバレ注意!)
La vie est comme un livre, fils.
Et tous les livres ont une fin.
Peu importe combien tu aimes ce livre.....
..... Tu arriveras à la dernière page.....
..... Et ce sera fini.
Aucun livre n'est complet sans fin.
Et une fois que tu y es .......
Au moment où tu lis les derniers moments.......
.......Tu sais à quel point le livre est bon. Ca sent le vrai.
(息子よ、人生というのは一冊の本のようなものだ。
そう、全ての本には終わりがある。
お前がその本をどんなに好きだとしても、それに変わりはない.....
..... 最後の頁に来たら.....
..... それで終わりだ。
本というものは、終わりがなければ完成しない。
そして、そこまで来たら、
最後の瞬間を読む時、
あまえは、その本がどんない素晴らしいものであるのかを、どれ程真であるのかを、知る事になるんだ)
_______________________
Quand tu accepteras qu'un jour, tu mourras....
...... Tu profiteras vraiment la vie.
(いつか自分が死ぬんだという事を受け入れた時、....
...... お前は、人生を真に楽しめるようになるのさ)
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著者 : Arnaud Dudek
分類 : 多読
出版社 : Alma
本の種類 : ソフトカバー(13.5x1.5x18.5)
ページ数 : 167頁
紛失した写真機をきっかけに出会った、バツイチで失業中の中年男 Jean-Claude Stillman と70過ぎの未亡人 Françoise Vittelli、
この二人の交流に、
兄の死によって、暗転した Françoise の亡き夫の Alfonso の晩年、
そして、Jean-Claude の友人で企業に務める傍ら漫画を書いてい Pierre Lacaze と、Jean-Claude の元妻、
などの姿を絡め構成されている、短い章立ての中編小説。
大げさな感動や、奇をてらったプロットはないのだけれど、心の機微にしっくりと来る、さり気ない著者の心遣いが感じられる小説。
この様なお膳立てなら、もっと大げさな感動を狙った小説が書けたはずなのに、わざとそれを外し、あっさりとまとめた所に、著者のセンスの良さが感じられた、好感の持てる一冊だった。
【こんな人にお勧め】
人間関係の妙をあっさりと描いた小説を読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 3.5/5
フランス語難易度 : 2.5/5(易<難)
読みごこち : 4.5/5(難<易)
フランス語難易度 : 2.5/5(易<難)
読みごこち : 4.5/5(難<易)
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ストーリー : Bernard Yslaire
作画・彩色 : Marc-Antoine Boidin
出版社 : Glénat
本の種類 : ハードカバー(24x1x32)
ページ数 : 56頁
【概要】
「La guerre des Sambre」シリーズ第1部の主人公であった Hugo の父にあたる Maxime-Augustin を軸に展開する「La guerre des Sambre」シリーズ第3部「Maxime et Constance」第一巻。
Maxime-Augustin は、第5-6巻のヒロインであった Charlotte が引き取った男の子。 そんなわけで本書は、Charlotte がヒロインの「La guerre des Sambre」シリーズ第2部の続編という形になっている。
(「Sambre」シリーズ・「Guerre des Sambres」シリーズ構成については、「Sambre」シリーズ・「Guerre des Sambres」シリーズ構成の記事をご参照下さい)
Maxime-Augustin は、第5-6巻のヒロインであった Charlotte が引き取った男の子。 そんなわけで本書は、Charlotte がヒロインの「La guerre des Sambre」シリーズ第2部の続編という形になっている。
(「Sambre」シリーズ・「Guerre des Sambres」シリーズ構成については、「Sambre」シリーズ・「Guerre des Sambres」シリーズ構成の記事をご参照下さい)
【ストーリー】
失意の中、Comte von Dantz と結婚した Charlotte は、自分の母親が産み落とした男の子を引き取り、その子は Maxime-Augustin と、名付けられる。
その後、Charlotte と Von Dantz 伯爵との間に、女の子 Josepha が生まれ、Maxime と Josepha は、兄妹として育てられる。 産後の肥立ちが悪く、健康を害した Charlotte は床を離れる事が出来ない。
伯爵は、愛娘の Josepha の事は、猫かわいがりするが、幼いのに関わらず、如才なく大人の女性たちの間を立ちまわる Maxime-Augustin の事をいまいましく感じており、 Maxime の事を邪険に扱う。
そして、長い病の末、Charlotte は、この世を去る。
ある日、伯爵の仕打ちに耐えかねた Maxime は、隣人の屋敷へ逃げこむ・・・
その後、Charlotte と Von Dantz 伯爵との間に、女の子 Josepha が生まれ、Maxime と Josepha は、兄妹として育てられる。 産後の肥立ちが悪く、健康を害した Charlotte は床を離れる事が出来ない。
伯爵は、愛娘の Josepha の事は、猫かわいがりするが、幼いのに関わらず、如才なく大人の女性たちの間を立ちまわる Maxime-Augustin の事をいまいましく感じており、 Maxime の事を邪険に扱う。
そして、長い病の末、Charlotte は、この世を去る。
ある日、伯爵の仕打ちに耐えかねた Maxime は、隣人の屋敷へ逃げこむ・・・
【グラフィック・彩色】
淡いグレー系を基調に、赤や臙脂系のカラーでアクセントが付けられている、暗めのトーンでまとめられているカラーリング。
その独特なカラーリングと、細い線描写のグラフィックにより、ストーリーの持つ陰鬱な雰囲気が見事に映し出されている。
作中人物の性格や感情表現が巧み。
その独特なカラーリングと、細い線描写のグラフィックにより、ストーリーの持つ陰鬱な雰囲気が見事に映し出されている。
作中人物の性格や感情表現が巧み。
【ストーリーボード(ネーム)】
「La guerre des Sambre」シリーズの第1、2部と同様に、シナリオのト書きの部分にあたる状況説明文が、コマの外の白い部分に描き込まれている。
欄外のテキストは明確で、漫画の部分は、リズミカルに構成されている。
欄外のテキストは明確で、漫画の部分は、リズミカルに構成されている。
【読み心地】
漫画部分はリズミカルに構成されており、コマの欄外に描き込まれているテキストは、分かりやすいフランス語で端的に書かれているので、読みづらく感じる事はなかった。
【読後感】
「La Guerre des Sambre」シリーズ通算7巻目、第3部の上巻にあたる本書は、Charlotte の母親が産み落とし、伯爵 と 結婚した Charlotte に引き取られた男の子 Maxime-Augustin を軸に展開する。
呪われた血を持ち、天使の様な美しい容姿の下に、醜悪な性格を隠す男の子 Maxime と、将来、彼と深い係わりを持つ事になる女性達の幼年期が、描かれてゆく。
ハッピーエンドや爽快なラストとは、無縁だとは分かっているけれど、読み始めたら、最後まで読まずにいられない、中毒性のあるシリーズ。
Yslaire 氏のストーリーもさる事ながら、作画担当の Marc-Antoine Boidin 氏の人間の醜悪さを、繊細なグラフィックで優美に表現した画力が、シリーズの大きな魅力となっているのは、まぎれもない事実である。
呪われた血を持ち、天使の様な美しい容姿の下に、醜悪な性格を隠す男の子 Maxime と、将来、彼と深い係わりを持つ事になる女性達の幼年期が、描かれてゆく。
ハッピーエンドや爽快なラストとは、無縁だとは分かっているけれど、読み始めたら、最後まで読まずにいられない、中毒性のあるシリーズ。
Yslaire 氏のストーリーもさる事ながら、作画担当の Marc-Antoine Boidin 氏の人間の醜悪さを、繊細なグラフィックで優美に表現した画力が、シリーズの大きな魅力となっているのは、まぎれもない事実である。
【こんな人にお勧め】
18世紀のフランスを舞台にした、繊細で素敵な彩色法のグラフィックの漫画を読みたい方。 「Sambre」「La guerre des Sambre」シリーズ のファン。
【きわめて個人的な本の評価】
総合評価 : 3/5
ストーリー : 3/5
グラフィック : 4/5
カラーリング : 5/5
ストーリーボード : 3.5/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 3.5/5(難<易)
ストーリー : 3/5
グラフィック : 4/5
カラーリング : 5/5
ストーリーボード : 3.5/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 3.5/5(難<易)
【関連記事】
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- 「Sambre」「La guerre des Sambre」 シリーズ
- Thread
- ジャンル : 本・雑誌
- テーマ : フランス漫画(BD)

著者 : Chahdortt Djavann
出版社 : Grasset
本の種類 : ソフトカバー(14.2x2x20.5)
ページ数 : 288頁
Nikki Hamilton は、殺人罪で起訴された13歳の Rody の公設弁護人に指名された。 しかし、 Nikki の弁護の甲斐なく、3人の男を拳銃で撃ち殺した現行犯として逮捕された Rody は、無期懲役刑の判決を受けた。
Rody が全てを打ち明けなかったため、彼を十分弁護出来なかったという思いに苛まれた Nikki は、裁判が終わった後も、毎週日曜日へ刑務所へ面会にゆき、 Rody へ読み書きを教えていた。
そして、 Rody が収監されて4年目のある日、Nikki は、ふと思い立ち、 Rody へ本を書いてみないか、と提案する。 すげなく断られると思っていた Nikki の予想は外れ、 Rody は、Nikki が自分についても何か書く事を条件に、Nikki の申し出を承諾する・・・
本書の裏表紙の本書紹介文は、
『..... roman noir : âme sensibles, s'absetenir !
(ロマン・ノワール : ショッキングな描写が苦手な方はご遠慮ください!)』
というフレーズで、締めくくられている。
グロが苦手な私は、通常ならこの手の本は避けて通るのだが、本書の著者は Chahdortt Djavann 氏。 Chahdortt Djavann 氏の作品は、今まで数冊読んでいるのだが、そのどれもが、イラン女性のやるせない思いを、力強く、そして切なく綴った、凛とした作品ばかりだった。
その Chahdortt Djavann 氏の作風とグロテスクな描写が、私の頭の中では、結びつかず、好奇心をじわじわ刺激されてしまい、恐る恐る本書を開いた。
そんな本書は、アメリカ合衆国のディープ・サウスを彷彿させる地域にある、犯罪率が高く、ゲットー化している Redville という架空の地を舞台にしたフィクション。
Big Daddy と呼ばれる犯罪組織のボスに目をかけられ、彼の後継者となるべく教育を受けていた、ちびの孤児の Rody、
そんな彼の公設弁護人として指名された、複雑な家庭環境で育った孤独な女弁護士の Nikki 、
この二人の過去を語った第一部、そして、 Rody を釈放しようと試みる Nikki の試みを語った第2部の、2部構成になっている。
裏表紙の警告文の示すよう、作中、Rudy が目撃したハードに残酷な拷問のシーンが、第一部に2箇所ばかり登場する。
第一部は、一章が数頁と短い上、大体、どの辺りからハードになるのか見当が尽くし、詳細を知らなくても作品を理解する妨げにはならないので、その手の描写が苦手な方は、飛ばして読む事をお勧めする。
未成年の殺人犯を軸に据えたストーリーや、ノワールーとしてのプロットには、斬新さは感じられなかったものの、凄惨な暴力描写を含んでおり、すさんだ社会問題をテーマにした小説であるにも関わらず、Nikki という女性弁護士の存在により、Chahdortt Djavann 氏らしさが感じられる、一味違った作品に仕上がっている。
【こんな人にお勧め】
アメリカの無期刑を受けた未成年者を題材にした小説を読みたい方。 多読用。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
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