
著者 : Pierre Bordage
出版社 : L'Atalante
本の種類 : ソフトカバー(14.5x3.3x20)
ページ数 : 443頁
宇宙とそこに生きる生命体を破滅から救え、という使命を受けた5人の平凡な男女の活躍を描いた5部作「La Fraternité du Panca」第4巻。
この巻では、
一番目の兄弟へ逢うため、Alpha du Tarz 系へ赴く様、指令を受けた Oden 、
Phi du Xantor 系の6番目の惑星 Iox の住人で、Vex と名づけられた、時間回路網を通り抜ける術を身に着けた少年 Bent、
『Panca の2番目の兄弟と1番目の兄弟が接触するのを阻止せよ』との任務を受けた、Nu de Laqranj 系の惑星 Shiv に拠点を持つ傭兵組織 Confrérie des Aswins の腕利き傭兵の Qwor とその部下の女性傭兵 Ossia、
この3つのストーリーが並行して語られてゆく。
戦闘経験が皆無の Onden が、3人の兄弟の âmna の記憶を頼りに、なんとか困難な状況を、必死に切り抜けようとする様、
それと平行して、Vex を通り、過去の時代へ遡り、何度も命の危険に晒されながらも Spectrmpe と呼ばれる Vex に居を定めた老人 Ferlu に導かれるまま、危機をくぐり抜ける術を身に着けてゆく Bent、
惑星 Siphar のストリートギャングの壊滅を請け負った Confrérie des Aswins の傭兵から、16歳の時にスカウトされ、Confrérie des Aswins の一員となった元ストリートギャングの女ボス Ossia と、彼女がほのかな想いを寄せる Qwor との Frère du Panca を求め、未知の惑星を巡る旅、
等などの血湧き肉躍る作中人物たちの所行に加え、
惑星 Iox に、夜な夜な地底から出現し、人間を食らう化け物 Orver、
惑星 Iox にある迷路のような地下神殿と、そこに祀られている Oracle と呼ばれている異様な生き物 、
時間網を通ってたどり着いた、原始的で理不尽な慣習が支配する惑星 Orign の古代の都市、
たった一人のアンドロイドに守られた、山の上の巨大なブロックで作られた城壁の上にそびえ立つ建築物、
等など、今回も雄大かつ精緻な舞台設定が用意されている。
そして、
Veiller sur toi ne signifie pas agir à ta place ou écarter les obstacles de ton chemin, mais au contraire te rendre autonome, donc fort.
(君の面倒を見るというのは、君の代わりに行動したり、君の前にある障害を排除するという意味でなくて、むしろその逆に、君を自力で乗り切られるように、つまり君を強くする、という事なのさ)
なんていう、Ferlu の Bent へ対する忠言という形で、現実世界でも適応出来ると思ったフレーズが盛り込まれているのも、本書の魅力を際立てている。
まあ、これは、この巻に限った事ではなく、本シリーズでは、随所にメモっておきたくなるフレーズが認められる。
La Fraternité du Panca の概要が明かされ、4つの âmna が1番目の兄弟へ引き継がれた所で本書は終りを迎える。
はい、ここまで読んだら最終巻を読まずにはいられません。
【こんな人にお勧め】
斬新で綿密な世界観に基づかれた壮大なSF・冒険小説を読みたい方。 SFファン。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
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- 「La fraternité du Panca, Tome 3 : Frère Kalkin」
- 「La fraternité du Panca, Tome 5 : Frère Elthor」
- 著者名別索引・小説 【著者名 B】Pierre Bordage
【外部リンク】
2016年12月1日に【関連記事】にシリーズ作の記事へのリンク追加。
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♥ Coup de coeur ♥
「La Fraternité du Panca, tome 3 : Frère Kalkin
」
著者 : Pierre Bordage
出版社 : L'Atalante
本の種類 : ソフトカバー(14.5x3.5x20)
ページ数 : 445頁
宇宙とそこに生きる生命体を破滅から救え、との使命を受けた5人の冒険を描いたSF小説5部作「La Fraternité du Panca」第3巻。
この巻では、
『オリオン腕から一万パーセク離れた所にある Sagicar 腕にある、Gamma Begvan 系へ直地に赴き、3つの âmna を 2番目の兄弟に渡せ』
との指令を La Fraternité du Panca から受けた La Fraternité du Panca の3番目の兄弟である Kalkin、
『Fraternité du Panca の3番目の兄弟と2番めの兄弟の接触を阻止せよ』
との任務を請け負った Thanaüm 出身の女暗殺者 Vilnea、
Solar 2 系唯一の居住可能な惑星 NeoTierra の首都 BeïBay にあるメディア報道局(Grand médium) Canal Sat の美人報道士(Médialist)の JiLi、
Gamma Begvan 系にある7番目の惑星 Albad にある Mussina コロニーに住む農家の娘 Klarel Watzer 、
この4人を軸にストーリーが構築されている。
そして、この4人に加え、
シリーズ作の各章の冒頭に、引用という形でしばしば挿入されている研究書の著者である Odom Dercher 、
やばい仕事もいとわない、宇宙の運び屋 Bakmo とその仲間たち、
Gamma de l'Orka 系にある、氷に覆われた惑星 Gayenn の地下都市 Derchan の住民の一人 Dravor と、 Derchan の住民たちの信仰を集めている『madre』 と呼ばれている、奇妙な少女の霊媒、
村人達からリンチにあう寸前の Klarel Watzer の命を救った
Albad 政府軍の Laruy Clausko 隊長に、Klarel の護衛を任された軍人の Mathur や Lamir 、
等など、様々な人間が絡み合い、ストーリーは、本巻でもスリリングに展開してゆく。
次巻のタイトルが「Soeur Onden」なので、2番めの兄弟は女性であることは明白だが、これまでの巻とは違い、この巻では物語の終盤に入るまで4番目の兄弟が誰なのか明かされない、という趣向になっている。
ストーリーに関しては、1、2巻と比べると、戦闘シーンがやや少なめ。
しかし、その代わりに、地表が氷に覆われた惑星の地下都市 Derchan、
文明が進歩したメトロポリタン BeïBay 、
人類とは全く異なった形体の生命体 Froutz が住む、荒れ地が広がる、Gamma Nagvan (bras du Sagicar) 系にある7番目の惑星惑星 Albad と、そこに住む、封建的な絶対主義を維持している入植者達のコミューン、
等など、想像力を疾駆し、細密に組み立てられた舞台設定の描写と、そこの住む人々の慣習などから生まれる軋轢などに、筆が割かれている。
今回もこれまでに読んだ2巻と同様、楽しい読書を満喫する事が出来た。
このまま一気に5巻まで読み進むつもり。
【こんな人にお勧め】
【きわめて個人的な本の評価】
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2016年12月1日に【関連記事】にシリーズ作の記事へのリンク追加。

著者 : Pierre Bordage
出版社 : L'Atalante
本の種類 : ソフトカバー(14.5x3.5x20)
ページ数 : 445頁
宇宙とそこに生きる生命体を破滅から救え、との使命を受けた5人の冒険を描いたSF小説5部作「La Fraternité du Panca」第3巻。
この巻では、
『オリオン腕から一万パーセク離れた所にある Sagicar 腕にある、Gamma Begvan 系へ直地に赴き、3つの âmna を 2番目の兄弟に渡せ』
との指令を La Fraternité du Panca から受けた La Fraternité du Panca の3番目の兄弟である Kalkin、
『Fraternité du Panca の3番目の兄弟と2番めの兄弟の接触を阻止せよ』
との任務を請け負った Thanaüm 出身の女暗殺者 Vilnea、
Solar 2 系唯一の居住可能な惑星 NeoTierra の首都 BeïBay にあるメディア報道局(Grand médium) Canal Sat の美人報道士(Médialist)の JiLi、
Gamma Begvan 系にある7番目の惑星 Albad にある Mussina コロニーに住む農家の娘 Klarel Watzer 、
この4人を軸にストーリーが構築されている。
そして、この4人に加え、
シリーズ作の各章の冒頭に、引用という形でしばしば挿入されている研究書の著者である Odom Dercher 、
やばい仕事もいとわない、宇宙の運び屋 Bakmo とその仲間たち、
Gamma de l'Orka 系にある、氷に覆われた惑星 Gayenn の地下都市 Derchan の住民の一人 Dravor と、 Derchan の住民たちの信仰を集めている『madre』 と呼ばれている、奇妙な少女の霊媒、
村人達からリンチにあう寸前の Klarel Watzer の命を救った
Albad 政府軍の Laruy Clausko 隊長に、Klarel の護衛を任された軍人の Mathur や Lamir 、
等など、様々な人間が絡み合い、ストーリーは、本巻でもスリリングに展開してゆく。
次巻のタイトルが「Soeur Onden」なので、2番めの兄弟は女性であることは明白だが、これまでの巻とは違い、この巻では物語の終盤に入るまで4番目の兄弟が誰なのか明かされない、という趣向になっている。
ストーリーに関しては、1、2巻と比べると、戦闘シーンがやや少なめ。
しかし、その代わりに、地表が氷に覆われた惑星の地下都市 Derchan、
文明が進歩したメトロポリタン BeïBay 、
人類とは全く異なった形体の生命体 Froutz が住む、荒れ地が広がる、Gamma Nagvan (bras du Sagicar) 系にある7番目の惑星惑星 Albad と、そこに住む、封建的な絶対主義を維持している入植者達のコミューン、
等など、想像力を疾駆し、細密に組み立てられた舞台設定の描写と、そこの住む人々の慣習などから生まれる軋轢などに、筆が割かれている。
今回もこれまでに読んだ2巻と同様、楽しい読書を満喫する事が出来た。
このまま一気に5巻まで読み進むつもり。
【こんな人にお勧め】
斬新で綿密な世界観に基づかれた壮大なSF・冒険小説を読みたい方。 SFファン。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4.5/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
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- 著者名別索引・小説 【著者名 B】Pierre Bordage
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♥ Coup de coeur ♥
「La fraternité du Panca, Tome 2 : Soeur Ynolde
」
著者 : Pierre Bordage
出版社 : L'Atalante
本の種類 : ソフトカバー(14.5x3.5x20)
ページ数 : 444頁
宇宙とそこに生きる生命体を破滅から救え、という使命を受けた5人の平凡な人間たちの活躍を描いた5部作「La Fraternité du Panca」第2巻。
この巻では、
父であり、5番目の兄弟である Erwan の âmna と、自分の âmna を Tau du Kolpter 系にいる3番目の兄弟へ届けよ、
との指示を受けた金髪の美女 Ynolde、
惑星 Jnandir にある、Thanaüm と呼ばれる暗殺者養成機関での訓練を終えるやいなや、
La Fraternité du Panca の4番目の兄弟と3番めの兄弟の接触を妨害し、3連鎖を阻止せよ
との任務を、Thanaüm の長から直々に命じられた、Thanaüm ナンバーワンの暗殺技術を持つ Silf 、
の二人を交互に主人公として、ストーリーが構成されている。
この二人に加え、
迫り来る殺人集団に命を付け狙われる、美しい Ynolde の護衛にあたる仮面を被った軍人 Duhog 、
美人局にはめられ、巻き上げられた任務経費を取り戻そうとする Silf に救いの手を差し伸べる女達、
等などバラエティーに富んだ面々が登場し、アクション・冒険的な要素は勿論の事、海竜漁に、空間瞬間移動が可能な地下トンネル等などSF・ファンタスティック的な要素、そしてロマンスをもふんだんに盛り込み、ストーリーはテンポよく展開してゆく。
際限のなく広がる Pierre Bordage 氏のイマジネーションの豊かさには、今回も、ため息がもれた。
お話の終着点は、なんとなく想像できてしまったが、それまでの過程が楽しめるので、著者の他の作品同様、それは読書を楽しむ妨げにはならなかった。
次巻が、とっても楽しみ。
【こんな人にお勧め】
【きわめて個人的な本の評価】
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著者 : Pierre Bordage
出版社 : L'Atalante
本の種類 : ソフトカバー(14.5x3.5x20)
ページ数 : 444頁
宇宙とそこに生きる生命体を破滅から救え、という使命を受けた5人の平凡な人間たちの活躍を描いた5部作「La Fraternité du Panca」第2巻。
この巻では、
父であり、5番目の兄弟である Erwan の âmna と、自分の âmna を Tau du Kolpter 系にいる3番目の兄弟へ届けよ、
との指示を受けた金髪の美女 Ynolde、
惑星 Jnandir にある、Thanaüm と呼ばれる暗殺者養成機関での訓練を終えるやいなや、
La Fraternité du Panca の4番目の兄弟と3番めの兄弟の接触を妨害し、3連鎖を阻止せよ
との任務を、Thanaüm の長から直々に命じられた、Thanaüm ナンバーワンの暗殺技術を持つ Silf 、
の二人を交互に主人公として、ストーリーが構成されている。
この二人に加え、
迫り来る殺人集団に命を付け狙われる、美しい Ynolde の護衛にあたる仮面を被った軍人 Duhog 、
美人局にはめられ、巻き上げられた任務経費を取り戻そうとする Silf に救いの手を差し伸べる女達、
等などバラエティーに富んだ面々が登場し、アクション・冒険的な要素は勿論の事、海竜漁に、空間瞬間移動が可能な地下トンネル等などSF・ファンタスティック的な要素、そしてロマンスをもふんだんに盛り込み、ストーリーはテンポよく展開してゆく。
際限のなく広がる Pierre Bordage 氏のイマジネーションの豊かさには、今回も、ため息がもれた。
お話の終着点は、なんとなく想像できてしまったが、それまでの過程が楽しめるので、著者の他の作品同様、それは読書を楽しむ妨げにはならなかった。
次巻が、とっても楽しみ。
【こんな人にお勧め】
斬新で綿密な世界観に基づかれた壮大なSF・冒険小説を読みたい方。 SFファン。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4.5/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
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著者 : Pierre Bordage
出版社 : L'Atalante
本の種類 : ソフトカバー(14.5x3.5x20)
ページ数 : 446頁
Ispharam 系の3番めの惑星 Boréal の僻地にある山岳地帯で、cheveux d'ange と呼ばれる植物繊維で織られた布の輸入業を営んでいた Erwan は、彼の二人目の子供を身ごもっている愛する妻と娘と共に、冬ごもりの支度を始めていた。
そんな折、Erwan は、かつて若い頃イニシエーションを受け、その一員となった謎の組織 Fraternité de Panca からの指令を受ける。
その指令とは
宇宙の生命体全体への危機が迫っており、それを回避するため、Pélopon 系にある Epsilon の惑星 Plaïtos へ、直ちに赴き、そこで彼の頭部に埋め込まれている âmna と呼ばれるインプラントを4番目の兄弟へ渡せ
というものであった。
Plaïtos への道のりは、とてつもなく長く、旅行には80年余りが必要であった。 人工的に身体の老化を減速させる薬物を用いる事により、それを十数年に減少させる事が可能であったが、Fraternité de Panca は、この種の薬物の使用を禁じていた。
もし、Plaïtos へ向かえば、もう二度と妻と娘に逢うことはかなわず、生まれてくる子供の顔を見ることすら出来ない。
しかし、Fraternité de Panca の命令は絶対であるため、それに背くことはかなわなかった。
幸い彼には、妻と子が何の不自由なく一生暮らしてゆけるだけの蓄えがあった。 深く沈む心を抱え、雪が降りしきる夜、Erwan はそっと家を出る。
Pierre Bordage 氏の代表作の一つである、5部作の純SF小説「La Fraternité du Panca」シリーズの第一巻。
タイトルにある『Panca』とは、サンスクリット語で『5』を意味するとの事である。
兄弟 (Frère もしくは soeur) と呼ばれる Fraternité de Panca の一員となった者達は、イニシエーションを終えた後、âmna と呼ばれるインプラントと、Cakra と呼ばれる円盤状の武器を授かる。
後頭部に埋め込まれた âmna には、その者のエネルギーと記憶が封印され、Fraternité de Panca からの指示は、âmna を通し、直接、脳へ伝えられる。
Cakra は、有機物からなる武器で、持ち主を感知する術を備えており、持ち主以外の者には使用出来ない。 又、Cakra は熱を発する事で、持ち主に危機が迫っていることを告げる。 熱を帯びた Cakra の中に手を差し込み、敵に向けると Cakra から火の玉が放たれ、敵は瞬時に焼尽させられる。
Fraternité de Panca によると、人間の指の数である『5』は、聖なる数であり、Fraternité de Panca の5人の兄弟の âmna が繋がり、『Quinte (5連鎖)』を作り出する事により、強大な力が生まれ、それにより宇宙を破滅から救う事が出来る。
以上が、「Fraternité de Panca」シリーズの大まかな設定である。
この「Fraternité de Panca」シリーズの第1巻である本書では、
『Fraternité de Panca』の指令を受け、はるかな宇宙の旅へと誘われる Fraternité de Panca の5番目の兄弟にあたる Erwan 、
そして、惑星 Amble の Pays noir と呼ばれる僻地で農業を営んでいたが、ある事情により、村を追われる事になった両親に連れられ、惑星 Plaïtos へ移住することになった少年 Olméo 、
この二人が主人公として、ストーリーが展開してゆく。
又、各章の冒頭には、小さい活字で、背景となるその惑星特有の事象などについての説明が、書物の引用という形で掲載されている。 それは、惑星の風習であったり、伝説の一部であったり、異色な生命体に関する説明であったり、Erwan の娘の日記であったりする。
章の冒頭に、小さい活字で文を挿入するというのは、フランスの小説で良く使われる手法だが、通常は、既刊の書物からの引用が用いられる。 架空の書物の引用という形で、この手法を背景説明に利用するというのは、なかなか賢い手法である。
Sâ という過激で原理主義的な宗教の導師 Sâtagne 達から、何度も命を狙われながらも、危機を回避し、惑星 Plaïtos への、帰ることのない果てしない旅を試みる Erwan、
そして、列車の中で出会った少女 Sayi と愛を育みながら、強盗や、暴動、人さらい等など、数々の困難にぶつかりながらも、旅を続ける Olméo、
この二人の旅の様が、交互に綴られていくのだが、「ああ!これからどうなるの?!」というところで、その章が終わり、もう一人の主人公のお話へと変わってゆくので、興味をグングンと引っ張られ、あっという間に読み干してしまった。
そのアクションにつぐアクションの、アクション映画なみの活劇も読ませるが、それ以上に凄いと思ったのは、豊かな想像力に裏打ちされた綿密な舞台設定。
主人公たちが訪れる惑星や、町々、そして、交通機関、人間以外の生命体等など、壮大で緻密な世界設計と、その描写の芳醇さに、これこそSFを読む醍醐味!と、グングンとひきこまれてしまった。
先に紹介した「Les dames blanches」が、ストーリーに託されたメッセージを伝えるために、SFを利用した作品であるなら、本書は、SFというコンセプトを楽しむために書かれた、純エンターテイメント的な小説。
若いころに成り行きで一員になった組織のために、訳も分からないまま、妻子供を捨てる・・・というストーリーには、新興宗教的な胡散臭さを感じてしまったが、それ以外は、かなり楽しめた。
次巻が楽しみ。
【こんな人にお勧め】
斬新で綿密な世界観に基づかれた壮大なSF・冒険小説を読みたい方。 SFファン。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
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著者: Patrick Prugne
出版社 : Editions Margot
本の種類 : ハードカバー(25x1.5x32.5)
ページ数 : 80頁
【概要】
20世紀初めのパリのモンマルトルを舞台に、モンマルトルに住む悪ガキ達と不動産屋の父を持つブルジョア階級の男の子 Jean Nobalard のふれあいを描いた漫画。
モンマルトルに住む子供達を題材にしたポスターやイラストを数多く残したイラストレーターである Francisque Poulbot(フランシスク・プルボ)氏へのオマージュが感じられる56頁の漫画の後ろに、Francisque Poulbot のポスター2枚+略歴、そして本書のために描かれたクロッキー集18頁が付いている豪華本。
モンマルトルに住む子供達を題材にしたポスターやイラストを数多く残したイラストレーターである Francisque Poulbot(フランシスク・プルボ)氏へのオマージュが感じられる56頁の漫画の後ろに、Francisque Poulbot のポスター2枚+略歴、そして本書のために描かれたクロッキー集18頁が付いている豪華本。
【ストーリー】
クリッシーにあるお屋敷に住んでいる Jean Nobalard は成績が悪いため、いつも父親から怒られてばかりいた。 ところが、モンマルトルの丘の荒地を開発し、大儲けしようと目論む Jean の父を快く思っていない子供達に、Jean は人質にとられてしまう。
【グラフィック・彩色】
これまでに、このブログで紹介した Patrick Prugne 氏の他の作品同様、直接彩色法でカラーリングされている水彩画のようなグラフィックのBD。 今回も一枚描くのに一体何時間かかったのだろうかと、ため息がもれた。
【ストーリーボード(ネーム)】
セリフでストーリー進行がなされるコマの合間に、グラフィックのみでストーリーを説明するコマを交え、ネームが構成されている。
【読み心地】
出だしの部分はじっくりと読む必要があったが、それ以降はさらさらと読めた。
【読後感】
本書のタイトルとなっている『poulbot (男性名詞) 』とは、パリの恵まれない家庭の子供を意味する単語である。 この単語は、本書にもチョイ役で登場する Francisque Poulbot 氏が、その作品の中、パリのモンマルトル界隈に住む恵まれない家庭の子供達を、好んで題材にした事が語源となっている。
「Poulbots」のタイトルが示すよう、ストーリーは、20世紀初めの荒地が広がるモンマルトルを舞台に、悪ガキ達を軸に展開する。 ストーリー、設定、そして作中人物に共通点はないが、本書を読んだ時、なぜか「ボタン戦争」を思い出してしまった。 それは読み終わった後、自然と笑みがもれ、映画「ボタン戦争」を見た時のような、ほんわかした気持ちになれたせいかもしれない。
Francisque Poulbot 氏を偉人扱いせず、あくまでも子供達を主役に、あっさりとまとめた所が、とてもいいと思った。
グラフィックについては、先に紹介した Patrick Prugne 氏の他の作品同様、素晴らしい出来。 ただ、当時のモンマルトルは、貧乏人が住む荒れ地だったので、「あの Patrick Prugne 氏が描いたモンマルトルの美しい街並みが見れるかも?」と期待した方は、ちょっとがっかりされるかもしれない。
「Poulbots」のタイトルが示すよう、ストーリーは、20世紀初めの荒地が広がるモンマルトルを舞台に、悪ガキ達を軸に展開する。 ストーリー、設定、そして作中人物に共通点はないが、本書を読んだ時、なぜか「ボタン戦争」を思い出してしまった。 それは読み終わった後、自然と笑みがもれ、映画「ボタン戦争」を見た時のような、ほんわかした気持ちになれたせいかもしれない。
Francisque Poulbot 氏を偉人扱いせず、あくまでも子供達を主役に、あっさりとまとめた所が、とてもいいと思った。
グラフィックについては、先に紹介した Patrick Prugne 氏の他の作品同様、素晴らしい出来。 ただ、当時のモンマルトルは、貧乏人が住む荒れ地だったので、「あの Patrick Prugne 氏が描いたモンマルトルの美しい街並みが見れるかも?」と期待した方は、ちょっとがっかりされるかもしれない。
【こんな人のお勧め】
20世紀初めのパリの悪ガキ達を主人公にした漫画が読みたい方。
直接彩色で描かれた水彩画風のグラフィックのBDを読みたい方。
直接彩色で描かれた水彩画風のグラフィックのBDを読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】
総合評価 : 4/5
ストーリー : 3.5/5
グラフィック : 4/5
カラーリング : 4.5/5
ストーリーボード : 3/5
フランス語難易度 : 2/5(易<難)
読みごこち : 3/5(難<易)
ストーリー : 3.5/5
グラフィック : 4/5
カラーリング : 4.5/5
ストーリーボード : 3/5
フランス語難易度 : 2/5(易<難)
読みごこち : 3/5(難<易)
【関連記事】
【外部リンク】
本書の一部も読めるアマゾン・フランスの「Poulbots
」紹介ページ

著者 : Antoine Laurain
分類 : 多読
出版社 : Flammarion
本の種類 : ソフトカバー(13.5x2.5x21)
ページ数 : 278頁
パリで一般医を営む Alain は、奇妙な郵便を受け取る。
それは、30年以上前にメンバーだったロックバンド Les Hologrammes がレコード会社へ送ったデモテープへの、レコード会社からの好意的な返事だった。 なんと、この封書は、改築のため解体した郵便局の郵便仕分け棚の後ろから見つかったため、30年後に配達されたのたっだ。
自分たちが、かつて作った曲が聞きたくなった Alain は、当時のバンドのメンバーへ、デモテープを持っているか尋ねる事にする・・・
青春時代の一コマを共に過ごしたロックグループのメンバーの現状を綴りながら、現代フランスの幾つかの断面を切り取った小説。
一般医としてパリで開業している、当時医学生だったギター担当の Alain Moussoukier
故郷に帰り、両親の後を継ぎ、ホテルを経営をしている元ボーカリストの Bérangère Leroy
宝くじに当って得た富を元に政界へ進出を図る、極右の政治家になった元ベーシスト Sébastien Vaugan
現代美術アーティストとして活躍している元ドラマー+作曲担当の Staninslas Lepelle
タイでリゾートホテルを経営している 元キーボード+作曲担当の Fréderic Lejeune、
両親の骨董店を継いだものの非業の死を遂げた、メンバーの尊敬を集めていた教養深い作詞担当の Pierre Mazart
Pierre の弟で、現在は国際企業のCEOとして大活躍中の、かつてグループのプロデュースを担当していた Jean-Bernard Mazart 。
音楽だけが接点であった、全く違った環境で育った男女が、それぞれ思い思いの人生を歩み、人生の分岐点にたどり着いた様が、軽快な筆致にのせ語られてゆく。
ストーリーも悪くはなかったが、小気味の良い余韻を胸に残す、味のある幕の引き方が、ひときわ印象的に感じられた。 気晴らしの読書に最適な一冊である。
【こんな人にお勧め】
青春時代のノスタルジーに浸れる小説を読みたい方。 多読用。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 3/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
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19:09
♥ Coup de coeur ♥
「La tristesse de l'éléphant
」
ストーリー : Nicolas Antona
作画・彩色 : Nina Jacqmin
出版社 : Les Enfants Rouges
本の種類 : ソフトカバー(22x0.5x29.5)
ページ数 : 79頁
【概要】
【ストーリー】
【グラフィック・彩色】
【ストーリーボード(ネーム)】
【読み心地】
【読後感】
【こんな人のお勧め】
【きわめて個人的な本の評価】
【外部リンク】

ストーリー : Nicolas Antona
作画・彩色 : Nina Jacqmin
出版社 : Les Enfants Rouges
本の種類 : ソフトカバー(22x0.5x29.5)
ページ数 : 79頁
【概要】
孤児院で育ったデブで気の優しい Louis と、サーカス一座で育った象使いの少女 Clarara を軸に展開する漫画。 色鉛筆画又はパステル画を思わせる独創的なカラーリングが用いられている。
【ストーリー】
デブで、のろまで、内気な孤児の Louis は、孤児院では友達も出来ず、いつもいじめられていた。 ある日、孤児院の近くにサーカスがやって来る。 サーカスの華やかさと象使いの美しい少女に魅せられた Louis は、サーカスに通いつめるようになる。 そして、ある夜、象の Pégace 世話をする女の子を、茂みに隠れて見ていた Louis は、 Pégace に見つかってしまう。
【グラフィック・彩色】
赤と黒を基調にしたオリジナリティのあるカラーリングが、とっても魅力的。 漫画やBDというより、絵本の挿絵のような作画+カラーリングの手法が用いられている。
【ストーリーボード(ネーム)】
リズミカル。
【読み心地】
快適。
【読後感】
孤独な二人の子供の出会いと、彼らの成長を、バンド・デシネではあまりお目にかかることのない独特なカラーリングのグラフィックに乗せて詩的に描いた、コマ割りされている絵本、と呼びたくなる一冊。
やもすれば、陳腐な漫画にもなりうるストーリーを、ここまで読み応えのある作品に仕立てあげた、作画担当の Nina Jacqmin 氏の技量には、感嘆の念がもれた。 恋愛漫画が苦手な私もかなり楽しめたので、恋愛漫画がお好きな方は勿論の事、そうでない方にもお勧めしたい一冊である。
やもすれば、陳腐な漫画にもなりうるストーリーを、ここまで読み応えのある作品に仕立てあげた、作画担当の Nina Jacqmin 氏の技量には、感嘆の念がもれた。 恋愛漫画が苦手な私もかなり楽しめたので、恋愛漫画がお好きな方は勿論の事、そうでない方にもお勧めしたい一冊である。
【こんな人のお勧め】
オリジナリティのあるカラーリングのBDを読みたい方。 感情描写が巧みな漫画を読みたい方。 心にしみいる恋愛漫画を読みたい方。
【きわめて個人的な本の評価】
総合評価 : 4/5
ストーリー : 3.5/5
グラフィック : 5/5
カラーリング : 5/5
ストーリーボード : 4/5
フランス語難易度 :1.5 /5(易<難)
読みごこち : 5/5(難<易)
ストーリー : 3.5/5
グラフィック : 5/5
カラーリング : 5/5
ストーリーボード : 4/5
フランス語難易度 :1.5 /5(易<難)
読みごこち : 5/5(難<易)
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