フランス語の本の読書記録 : Archives [ 2017年08月 ]

フランス語の小説、漫画、エッセイ等の読書の記録

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女護島に漂着したパイロットの冒険を独特なグラフィックで描いた漫画

16:06

表紙写真ile aux femmes「L'île aux femmes」

ストーリー : Zanzim
作画    : Zanzim
彩色    : Hubert

分類  : ファンタスティック系漫画、冒険漫画

出版社 : Glénat
本の種類: ハードカバー(24x1x32)
ページ数: 80頁


【概要】
飛行機の墜落により、無人島にたどり着いたパイロットの冒険を、ユーモラスさ漂う独特のグラフィックで描いた漫画。

【ストーリー】
1914年。 アクロバット飛行機乗りとして活躍していた主人公は、戦争が始まったため、徴兵され、郵便輸送機の飛行機乗りとして働くことになる。 戦場から郵便物を輸送の際に、敵の飛行機の攻撃を受けた彼の飛行機は海へと墜落する。 その後、彼は海岸で目を覚ましたのだが、彼が漂着したのは、女性のみが住む島だった・・・

【グラフィック・彩色】
鼻と体が細長い、さりげないユーモラスさが漂う、オリジナリティーのある絵柄。 
細部を省き、あっさりと描写された背景が、センスの良いカラーリングにより、引き立てられている。

【ストーリーボード(ネーム)】
セリフを極限に抑え、グラフィックでストーリーを説明する、BDでは余りお目にかかることのないストーリーボード構成。  漫画化の仕方にリズムが感じられる。

【読み心地】
非常に快適。

【読後感】
以前ブログで紹介した「La Sirène des Pompiers」や「Ma vie posthume」と同じ Zanzim&Hubert コンビによる、バンド・デシネ。  
ストーリー自体は、一昔前の映画にありそうな、良くまとまった冒険物。  普通に漫画化したら、陳腐になってしまう危険性をはらんでいるが、個性的で諧謔性の漂うグラフィックを用いる事により、寓話的な独特な風味のある作品に仕上げられている。

【こんな人のお勧め】
ユーモラスが感じられるグラフィックで描かれた冒険漫画を読みたい方。 スラスラ読めるBDをお探しの方。
 
【きわめて個人的な本の評価】
総合評価     : 3.5/5
ストーリー    : 2.5/5
グラフィック   : 4/5
カラーリング   : 4/5
ストーリーボード : 4.5/5
フランス語難易度 : 1/5(易<難)
読みごこち    : 5/5(難<易)

【関連記事】
  • 著者名別索引・BD 【著者名 H・I 】Hubert
  • 著者名別索引・BD 【著者名 W・X・Y・Z】Zanzim

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サクサク読めるファンタスティック系連作短編小説集

15:58

表紙写真baleine thebaide「La baleine thébaëde」

著者 : Pierre Raufast
分類 : ファンタスティック系小説、短編集、多読

出版社: Alma
本の種類: ソフトカバー(13.5x2x18.5)
ページ数: 218頁


デビュー作 「La fractale des raviolis」が、私に強烈な衝撃を与えた Pierre Raufast 氏の3番目の小説。

先にブログで紹介した「La fractale des raviolis」や「La variante Chilienne」と同様、奇想天外なのだが、実際にありそうな複数のエピソードが一つのうねりとなり、一つの小説を成していくというスタイルが用いられた中編小説である。   
先に紹介した2作と比較すると今回は、ニューテクノロジーがらみのエピソードが多くなっている。

「La fractale des raviolis」は、マトリューシュカ人形、「La variante Chilienne」はガラスの瓶に入った石の様な構成だったが、本書は、それぞれのエピソードの端がフックのようになっており、そのフックを別のエピソードのフックに引っ掛けて、エピローグに至るまで連鎖させてゆく、という、連作短編小説として、良く使われる手法が用いられている。

「La fractale des raviolis」同様、実際に存在する事柄に想像力で色を付け、仕立て上げられたエピソードが寄せ集められているのだが、ぶっ飛んだ面白さが味わえた処女作と比較すると、奇抜さ、斬新さといった点では少々トーンダウンしたように、私には感じられた。

どういうわけか、一つの作品を仕上げるために葬られた数々のエピソードへの著者の思いが綴られている「Lignes de suite」と題された「あとがき」的なテキストの方が、作品自体より、私には印象的に感じられたのだが、これは好みの問題であろう。

「La fractale des raviolis」があまりに凄すぎたため、辛めの評価になってしまったが、気軽にサクサク読める連作短編小説集なので、多読用や、気晴らしの読書に最適な一冊であるのは間違いない事を付け加えておきたい。

【こんな人にお勧め】
多読用。

【きわめて個人的な本の評価】
作品評価     : 3/5
フランス語難易度 : 2.5/5(易<難)
読みごこち    : 4/5(難<易)

【関連記事】
著者名別索引・小説 【著者名 R】Pierre Raufast

【外部リンク】
Pierre Raufast オフィシャルブログ

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アフガニスタン紛争をギリシャ悲劇になぞらえ語った小説

15:40

♥ Coup de coeur ♥
表紙写真Une-Antigone-a-Kandahar「Une Antigone à Kandahar」

著者 : Joydeep Roy-Bhattacharya
分類 : 独創的な小説、中近東が舞台、多読

原題: 「The Watch」
翻訳: Antoine Bargel
出版社: Editions Gallimard
本の種類: ソフトカバー(14x2.5x20.5)
ページ数: 263頁


アフガニスタンの Kandahar 地方にあるアメリカ軍ベースを目指し、ブルカを纏り、台車を改造した車椅子に乗った人影が山を降りて来る。 アメリカ軍ベースを襲撃し、命を落とした兄の死体を埋葬するため、その人物は山の向こうの村からやって来たのだ。

この人物は本当に死んだテロリストの妹なのか、それとも、それにみせかけ、テロを目論む者なのか? ベース内部は動揺する・・・

「Une Antigone à Kandahar」のタイトルがついている本書の著者は、カルカッタ出身の作家 Joydeep Roy-Bhattacharya 氏であり、原語は英語で、原題は「Watch」。

翻訳本とは思えないくらい、自然で、読みやすいフランス語に訳されており、本文の翻訳の質は申し分ない出来。  それなのに、どうしてこのような、作品を読む楽しみを削ぐタイトルが付けられたのか、理解に苦む所である。

フランス語のタイトルが示すよう、ソポクレスのアンティゴネの逸話をなぞり、本書のストーリーが組み立てられている。
しかし、ギリシャ悲劇になぞられたフィクションとは思えないほど、アフガニスタンの現状をリアルに映し出しており、実話を元にしていると言われたら、そのまま信じてしまいそうだ。 

「兄の死体を礼節に則って埋葬したい」と願う、両足をアメリカ軍の空爆により失ったアフガニスタン人の女性の視線から物語が語られる第1章で、本書は幕を上げる。  
そして、それに引き続く章では、アメリカ軍ベースに駐在する複数の士官や兵士の視点から、ベース襲撃、その後のベースの内情、ベースの前に居座る『テロリストの妹と名乗る人物』にどう遇するべきか戸惑う様、それに加え、それぞれの兵士の過去が明らかにされてゆく。

車椅子と共に生きる事を余儀なくされた、一人の女性の『兄の体を埋葬したい』という、人間としては当たり前の願い。

それと対峙し、

いつ、どんな形で襲ってくるか分からぬテロへの恐怖。

仲間の死がもたらしたショック。

睡眠不足と神経が張りつまされ続ける事から来る疲労。

逆らうことの出来ない上部からの指令。

タリバンに抑圧されているアフガニスタンの人々を救うために来たはずなのに、目の前のたった一人の女性の『家族を礼節にのっとって埋葬したい』という、慎ましい望みさえ叶える事の出来ないジレンマ。

等など、様々なジレンマと矛盾、そして過労とストレスに、心身を苛まれるアメリカ軍ベースに駐在する兵士らの心の叫びが、綴られてゆく。

仏語訳のタイトルが、ネタバレになってしまっているため、お話の終着点は、ある程度想像がついてしまったのだが、それにもかかわらず、本を閉じた後でも、心の震えが止まらなかった程の衝撃を受けた。

ここ数年の間、優れた小説や、胸を熱くする作品、感涙が止まらない作品には、幾度も出会ったが、衝撃という点では、本書に及ぶものは皆無である。

他国への軍事介入の難しさと、ギリシャ悲劇の偉大さがひしひしと伝わってくる、現代文学の傑作。

他国への軍事介入を决定する立場にある政治家には、是非とも一読してもらいたい、日本にも紹介してもらいたい一冊である。

【こんな人にお勧め】
国際軍事援助の難しさを描いた小説を読みたい方。 アフガニスタンを始めとする中東を舞台にした小説を読みたい方。 国際社会派小説と、ギリシャ悲劇を融合した小説を読みたい方。 

【きわめて個人的な本の評価】
作品評価     : 5/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち    : 4/5(難<易)

【外部リンク】
  • Joydeep Roy-Bhattacharya公式サイトの「Watch」紹介ページ
  • GALLIMARD 社の「Une Antigone a Kandahar」紹介ページ

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